抄録
ソフトウェア開発の最上位の要求分析フェーズでは,自然言語記述で要件(仕様)を記述し,これを,概念レベ
ルのクラス図に書き換えてモデルの精微化を図る.しかし,クラス図の書き方については,具体的な指針・方法論
を教えるテキストは多くない.本稿では,認知文法の基本的な考え方を準用して,このような曖昧な教育方針にな
っている背後に,日本語と英語の「言語差」が存在することを主張する.具体的には,クラス図は,英語の第1 文
型~第5 文型にそのまま対応している.従って,動詞中心であり,「格」を自由に助詞によって指定できる日本語
を,そのままクラス図にあてはめるのは,容易ではない.クラス図を描く前に,日本語による仕様書記述中に含ま
れる因果関係や主語となり得る名詞を探す「クリティカルリーディング」が必要と思われる.