抄録
タッチパネルの操作は高齢者や視覚障害者などにとって困難を伴う.そこで,従来からタッチパネルに触れた指に触感を与えて,操作を支援する研究が行われている.しかしながら,慣れ親しんでいるボタンスイッチの感覚とは異なったり,ボタンの位置が分からなかったり,装置の小型化に不向きだったりする.我々は,タッチパネルが本来持っている表示内容を変えれば任意のユーザインタフェースに対応できるという汎用性と柔軟性を損なわず,単純な機構によってボタンの位置とクリック感を与えることができるタッチパネルの実現を目指している.その実現にあたって,著者らは上記の特徴を備えるのに必要なハードウェアフレームワークを提案した(1).そして,そのハードウェアフレームワークに従って試作機を開発し、被験者に使用してもらった.すると,従来型のタッチパネルより試作機の方が,入力間違いが少なくなり,使いやすいという結果になり,提案タッチパネルの有用性が示せた.しかしながら,提案タッチパネルを普及させるには,様々な応用へ,提案タッチパネルを容易に適用できる必要がある.そのためには,(1)で示した一般的なハードウェアフレームワークだけではなく,ソフトウェアの一般的なフレームワーク(デザインフレームワーク)が必要になる.デザインフレームワークに従えば,任意のプログラマが提案タッチパネル上で様々なアプリケーションを統一的に開発できる.本論文では,提案タッチパネルのハードウェアフレームワークを概説した後に,アプリケーションのデザインフレームワークを示す.そして,試作機上での適用事例を通して,デザインフレームワークに従えば実際にアプリケーションが開発できることを示す.