抄録
近年,日本の急速な高齢化に伴う老人性難聴者の増加は大きな社会問題の一つである。難聴者に対する支援の一つとして補聴器の使用があるが,高度難聴者や加齢による認知能力の低下した高齢者の会話が聞き取れない原因は聴力の低下だけではないため,その効果は十分とは言えない。また,難聴者が病院等の受付で名前を呼ばれた時に気付くことができないため,不便に感じているというニーズがある。そこで,補聴器のような小型機器にユーザの名前が呼ばれた際に反応するための音声認識エンジンを組み込み,さらに聴力の低下したユーザのために視覚情報や振動により名前が呼ばれたことを知らせてくれる新たな認知支援システムがあれば有用と考える。そこで本論文では,日本人姓を含む音声のワードスポッティング音声認識法の性能改善を目的として,日本人姓の特徴に基づいた2種類の改善方法 (敬称に基づいた改善方法,無音区間の自動検出に基づいた改善方法)を提案し,その評価を行った。その結果,認識性能の低下の大きな原因の一つであった湧き出しを抑え,誤認識を防ぐことができた。