抄録
近年,喉頭摘出者のための電気式人工喉頭(以下電気喉頭)による音声の音質改善の検討が行われており,中村らにより肉伝導人工音声によるコミュニケーション支援システムが提案されている。現在我々は,電気喉頭を用いて発声された音声をマイクで収音し,スピーカで拡声する発声補助システムを検討している。本稿では,電気喉頭音声よりも音質の良い音源の検討を行った。ケプストラム分析により声道特性を比較するとRosenberg波音源が低域でも通常の声帯振動に近い音源であることがわかった。また,ケプストラムのケフレンシー幅に着目し,声帯特性を比較するとRosenberg波の声帯特性が最も通常発声のケフレンシー幅に近く,約96%の幅であった。以上のことより,電気喉頭の音源にRosenberg波を用いることで,電気喉頭音声の音質の改善が行える可能性があることがわかった。