抄録
近年,日本では65歳以上の人口が急速に増加しており,高齢者が自動車を運転する割合も増加している。また,昼夜における歩行者と自動車が関係する交通事故の統計によると,高齢者は夜間の死亡事故の割合が昼間の約2.4倍にもなることが報告されている。したがって,夜間の屋外環境下で人物の行動パターンを観察し,検知した人物の行動を車両運転手に通知することができれば,不慮の事故軽減に寄与できると考える。道路利用者の安全と安心を迅速にサポートするためには,車両や人物の行動を検知するだけではなく,移動する車両が安全に停止できる距離を考慮する必要がある。本研究はこれまでに,高齢化社会における交通事故の予防に効果的に貢献するため,熱赤外画像データを用いて夜間におけるリアルタイムの人物動作検出および車両検出手法に関して検討を行った。しかしながら,熱赤外画像データ内における検出した物体までの距離を推定するまでには至っていない。 そこで本研究では,熱赤外カメラを用いて夜間のデータ取得実験を行い,YOLOv8を活用することで,取得した熱赤外画像から車両や歩行者の行動を検出すると同時に,距離推定を行う手法について検討を加えた。具体的には,熱赤外カメラの距離推定に用いるピンホールカメラモデルのキャリブレーションパラメータを改善し,本手法の推定精度を評価した。