抄録
複数の薬剤を用法ごとに1つの包装材にまとめる一包化は,服薬管理を容易にする半面,類似薬剤の識別を困難にし,誤調剤のリスクを伴う。そのため,誤調剤の有無判別は,安全な医療に不可欠である。個々の錠剤を識別する関連研究は報告されているが,新薬の登場に伴う学習データの随時更新が必要であり,運用コストの高さが課題である。そこで本研究では,大規模データセットに依存しない誤調剤検出手法の開発を進めている。本手法の前処理では,5条件の照明下で撮影した画像を合成し,個別の錠剤画像を生成する。画像間の同一錠剤の対応付けには,従来はk-means法が用いられていたが, YOLO11の未検出による合成失敗や誤検出領域の合成,同一錠剤の重複出力が課題であった。そこで本稿では,YOLO11の信頼度閾値の見直し,DBSCANの導入,ならびにバウンディングボックスの座標点について検討した。まず,信頼度0.80以上の錠剤に対し,これまで用いていたk-means法とDBSCANによる合成画像の生成誤り件数を比較した。次に,最適なDBSCANの閾値εおよびクラスタリング対象の座標点(中心,左上,右下)を検討するため,撮影順の最初と最後の2画像において,信頼度0.70以上で検出された同一錠剤の座標間距離を算出した。さらに,YOLO11の信頼度閾値を0.80から0.05刻みで段階的に引き下げ,合成画像生成数に与える影響を評価し,最適な閾値を調査した。本研究が設定する実験において,信頼度閾値0.50で中心座標を用いたDBSCANによるクラスタリングが合成画像の生成誤り件数を最も少なくできることが明らかになった。