抄録
現在,日本では高齢者数および認知症有病率が徐々に増加している.高齢者の健康寿命を延伸するため,認知症予防の必要性が高まっている.この分野の研究では,eスポーツをプレイすることが認知機能の向上に良い影響を与えることが示されている.eスポーツから得られる刺激や感情を定量化することは,高齢者の認知症予防におけるeスポーツの有効性を評価するうえで重要であると考えられる.これまでの研究では,刺激や感情を定量的に評価する指標の生成を目的として,eスポーツ実施時の顔面皮膚温度変化に着目し,被験者に発生した情動の正負を推定する機械学習モデルについて検討してきた.しかしながら,情動の正負推定に用いる各特徴量について,それぞれがどの程度寄与しているかについては十分に検討されていない.そこで本稿では,eスポーツ実施時の顔面皮膚温度および顔の動きの変化に基づき,L1正則化ロジスティック回帰により選択された特徴量を用いて,特徴量除外が推定性能に与える影響を分析する.これにより,情動喚起区間における情動の正負推定に対する選択特徴量の寄与を検討する.その結果,「領域間差分(左-右)」を除外した場合,Balanced Accuracyは56.1%から63.3%へ,Specificityは40.0%から60.0%へ向上した.一方,Recallは72.2%から66.7%へ低下した.これらの結果から,一部の特徴量が分類の偏りを引き起こす可能性があり,その特徴量を除外することで正負情動推定の推定性能を安定化できる可能性が示された.