抄録
IoTデバイスの急速な普及に伴い、厳しい電力制約下における安全な通信への需要が高まっている。特に、環境発電デバイスは、電池交換や電源配線にかかるコストを削減するうえで有用である。しかし、環境発電デバイスから得られる電力は不安定であり、暗号化処理の途中でデバイスが停止する可能性がある。本研究では、CRYSTALS-Kyberに着目し、環境発電デバイス上でKyberの暗号化処理を完了させる手法を提案する。提案手法では、Kyberの処理中にスリープ期間を挿入し、環境から得られたエネルギーを蓄積させることで、電源電圧を回復させる。提案手法をTWELITE上に実装し、評価を行った。その結果、スリープ期間を設けない従来のKyber実装では、電力不足により、生成した暗号文を送信できなかった。一方、提案手法では、暗号文の送信と復号処理を正常に完了し、共有鍵を確立することができた。これらの結果から、スリープ期間を挿入することは、環境発電デバイス上でKyberを用いた安全な通信を完了させるための有効な手法であることが示された。さらに、本提案手法は、環境発電型IoTデバイスへの耐量子暗号の実用的な導入に寄与するものである。