2006 年 13 巻 p. 43-50
鉄道事業法の改正によって既存鉄道事業者は一定期間を経れば地元の同意が得られなくても廃止することができるようになった. その結果, 全国的に経営難に陥っている地方鉄道では廃止を視野に入れ地元自治体との協議を行っている. 一方, 地元自治体はその必要性を認識してはいるものの, 補助金を投入することに対する住民間の温度差が大きいため対応に苦慮しているところが多い. 近年では利用者以外の住民に対する理解を得るために, 実際の金銭では現れてこない社会的便益を算出するケースが見られるようになってきた. また鉄道事業者においては需要予測の甘さから, 急激な需要の変化への対応が遅れ, 経営の深刻さが増すようになってきたことも否めない.
こうしたことに鑑み, 本研究では外的影響を考慮した時系列の需要曲線モデルを作成し, このモデルを用いて長期の利用者便益計測を行うことによって, 地方鉄道の価値を顕在化させ, 地方自治体における補助政策の妥当性の検討を行う.