建設マネジメント研究論文集
Online ISSN : 1884-8311
ISSN-L : 1884-8311
13 巻
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  • 稲積 真哉, 木村 亮, 嘉門 雅史, 西山 嘉一
    2006 年 13 巻 p. 1-10
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    海面埋立処分場において、継手を有する鋼管矢板遮水壁の環境適合性を確保する評価手法や施工技術、ならびに長期的な維持・管理補修手法は、実験的にも解析的にも非常に複雑である。そのため、未だ鋼管矢板遮水壁の技術開発から評価手法、さらに長期的な維持・管理補修に及ぶ総合的なマネジメントに関する体系的な見解が示されていない現状にある。
    本研究では、海面埋立処分場における鋼管矢板遮水壁が有害物質の封じ込めに与える効果を浸透・移流分散解析によって評価することで、鋼管矢板遮水壁の性能および設置条件と環境適合性との関連性を検討している。さらに、独自に開発した鋼管矢板の一つであるH-H継手を施した連結鋼管矢板の適用による鋼管矢板遮水壁の施工技術ならびに環境適合性の向上を提案し、鋼管矢板遮水壁が発揮する遮水性の長期的な維持・管理補修手法を提案した。
    一連の成果として、海面埋立処分場の環境保全に求められる鋼管矢板遮水壁の透水係数は1×10-8cm/sオーダーであることを浸透・移流分散解析から明らかにし、H-H継手を施した連結鋼管矢板が1×10-8cm/sオーダーの透水係数を発揮できることを実験的に明らかにした。また、従来の鋼管矢板に対してH-H継手を施した連結鋼管矢板の維持・管理補修における特徴を示した。
  • 高橋 宏直, 吉田 二郎, 山本 幸司
    2006 年 13 巻 p. 11-20
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    大規模プロジェクトの事前段階で実施される事業評価では, 便益 (B) を費用 (C) で除したB/C値が一定の基準値を超えているかどうかで評価が行われる. その際、将来時点での便益も費用も本来は不確実であるにもかかわらず, 通常は不確実性について明確に考慮されていない.
    本研究では便益・費用ともに不確実性を考慮したモデル化を行うとともに, 一定期間経過した将来時点においてB>Cとなっている確率である「達成確率」の概念と推計手法を示す. さらに, 事前のB/C基準値と達成確率の関係を具体的に示すことにより, 不確実性を考慮した新たな事業評価手法の構築の可能性を示す.
  • Xuepeng QIAN, Mamoru HARUNA
    2006 年 13 巻 p. 21-32
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    New transportation system (People Mover) has been regarded as one of the most attractive topics in recent urban and regional development. This article is the study on the plan of constructing High Speed Surface Transportation (HSST), as a new magnetic levitation type of transit, in Shiga Prefecture. To plan a new transit in local area needs comprehensive consideration, not only from technical and financial aspects, but also from its social influence. The study tries to explore the relationship among people, transportation and related facilities from social psychological aspect and communication with residents to make efficient and effective planning. It tests the fit of the theory of planned behavior (TPB) by applying the Structure Equation Model (SEM) with the information from the residents in Otsu and Kusatsu City. Perceived behavior control, as a component of TPB, is found to be closely related to the intention. Therefore, the desired facility can help increase the acceptance greatly. The plan of constructing public sports center nearby one station of the new line is discussed together by optimizing the utility function. Regarding these, the article also considers the possible application of the hybrid planning system. This study can be a meaningful experiment of introducing some psychological theory intotransportation planning.
  • 倉田 洋寿, 渡邊 法美
    2006 年 13 巻 p. 33-42
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    物部川では、様々な環境問題が顕在化しており, それは物部川における内水面漁業の大きな不振を引き起こしている。本研究の主目的は、河川・水利施設などの社会資本の利用のあり方を見直すことによって、河川渇水問題解決の可能性を探ることである。河川渇水は、物部川の環境問題の一部にすぎないが、濁水や富栄養化などの他の環境問題を深刻化させる引き金となりうる。河川渇水の問題解決の手段として水利用効率化の可能性を検討するために、河川関係者への聞き取り調査並びに文献調査を行った。聞き取り調査の結果、農業の水利用量を減らすことは、物理的問題・組織的問題双方からの様々なリスクが伴うことが明らかとなり、短期的な問題解決は困難という結論に達した。そこで、住民と農家の協力体制を構築するために、プロジェクトマネジメントの基本的視点から、河川関係者間での合意形成を含めた中長期的な対策を提案することを試みた。
  • 高瀬 達夫, 大橋 賢二, 小山 健
    2006 年 13 巻 p. 43-50
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    鉄道事業法の改正によって既存鉄道事業者は一定期間を経れば地元の同意が得られなくても廃止することができるようになった. その結果, 全国的に経営難に陥っている地方鉄道では廃止を視野に入れ地元自治体との協議を行っている. 一方, 地元自治体はその必要性を認識してはいるものの, 補助金を投入することに対する住民間の温度差が大きいため対応に苦慮しているところが多い. 近年では利用者以外の住民に対する理解を得るために, 実際の金銭では現れてこない社会的便益を算出するケースが見られるようになってきた. また鉄道事業者においては需要予測の甘さから, 急激な需要の変化への対応が遅れ, 経営の深刻さが増すようになってきたことも否めない.
    こうしたことに鑑み, 本研究では外的影響を考慮した時系列の需要曲線モデルを作成し, このモデルを用いて長期の利用者便益計測を行うことによって, 地方鉄道の価値を顕在化させ, 地方自治体における補助政策の妥当性の検討を行う.
  • Mohammad Zaman, Minoru Shibuya, Kentaro Okuno, Masahide Horita
    2006 年 13 巻 p. 51-61
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    This paper provides an attempt to incorporate the new approach to social and environmental considerations in Japan's overseas development assistance projects. It is based on work carried out in the course of the feasibility study on the construction of the Padma Bridge in the People's Republic of Bangladesh. The framework is intended to provide a comprehensive view of the issues associated with social impact assessment for large infrastructure projects such as the proposed Padma Bridge, yet flexible enough for adaptation to the needs of other similar projects for managing impact assessment. The paper also contains results of the preliminary engineering designs with regard to acquisition of land and other assets, including displacement and relocation of the affected households. An estimated 3, 150 households will be displaced due to the construction of the bridge and associated facilities. In addition, 5, 000 households will be affected by loss of agricultural land. The framework and guidelines established an entitlement matrix designed to cover compensation for lost assets and restore or enhance the livelihoods of all categories of affected people. The impact assessment was integrated into the planning and design processes. As a result, the discussion of the key dimensions of the framework, including the approach and methodology of the study, focused on interpreting the results and eliciting lessons learned during the process.
  • 高橋 博, 平木 喜一郎
    2006 年 13 巻 p. 63-75
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    建設事業において、事業の短縮や遅延はコストやコスト以外の貨幣換算が困難な社会的な損失に大きな影響を与えることが考えられる。ここでは工期・工程の短縮・遅延に関する時間的コストを評価する方法を検討した。工期・工程の短縮及び遅延に対する直接の費用効果を算定した事業効率、環境及び経済、安全等の間接的な観点からの波及的影響、他工事との関連や関係者の調整などの工事を進めるにあたっての実施環境、の3つの大項目に分類した。また評価基準を5段階評価として各項目ごとに重み付け評価を実施して総合評価点を算出した。検証にあたってモデルダムを設定して現地調査やヒアリングを行い、この総合評価 (案) のダム現場への適用に向けた有効性の確認検討を行った。
  • 谷口 健五, 高瀬 達夫, 小山 健
    2006 年 13 巻 p. 77-86
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年, 我が国のみならず世界の国々で, 洪水による自然災害が増加している. そのような状況の中, 長野県長野市北部に流れる浅川への治水対策に対して多くの地域住民が関心を寄せている. 浅川は, これまで幾度となく氾濫・洪水を繰り返してきたが, 浅川特有の洪水災害に対する抜本的な対策が立てられておらず, 流域住民の水害への不安は取り除くには至っていない. 流域住民は行政による治水対策を待っているだけでなく, 自ら対策を施さなければならない. 流域住民自らが防災意識を高め, 対策を行う必要に迫られている. そこで, 本研究は浅川流域で洪水災害が発生したと想定し, 災害に伴う損失をイベントツリー解析 (ETA) を用いて算定し, リスクに対して市民がどういった行動をとるべきか, どういった対策を行うべきかをフォールトツリー解析 (FTA) を用いて導き出し, 流域住民主体の水害に対するリスクマネジメントを行うことを目的とする.
  • 二宮 仁志
    2006 年 13 巻 p. 87-100
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 社会基盤整備の合意形成プロセスにおいて第三者の果たしうる役割と機能について分析し, 第三者支援のあり方について考察することを目的とする. 近年, 社会基盤整備の是非をめぐるコンフリクトは社会的関心を呼び, 次第に市民参加や合意形成の必要性が認知されてきた. しかし, 事業に関与する主体間で共通する価値や利害を見出すことは容易ではなく, 第三者の技術的支援による合意形成手法が注目され試行的な取り組みがなされている. 本研究では, 著者の先行研究にて開発したインセンティブマネジメントを適用し, 合意形成プロセスにおける第三者の役割とその特性について分析した. その結果, 合意形成プロセスにおける関与主体間に生じるジレンマ,“不安” や “不信” の解消手法として, 第三者による適正な支援の有効性が示唆された. 特にドラマ理論を適用した分析モデルを構築することでジレンマ脱却に有効な第三者の特性が分析可能となった.
  • 大津 宏康, 見掛 信一郎, 井尻 裕二, 坂井 一雄
    2006 年 13 巻 p. 101-114
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    亀裂性岩盤中でのトンネル掘削においては, 断層破砕帯等の不良地山の出現や突発湧水の発生等により, 多大なコストオーバーランおよび, 長期にわたる工期延長を余儀なくされた事例が数多く報告されている. そのため本研究では, 筆者らがこれまでに示してきた地盤統計学を用いて推定する掘削コストに, 破砕帯の出現あるいは突発湧水等の発生に対する対策工の施工に要するコストを加えた建設コストを推定する手法を提案することを目的とする. 建設コスト評価手法においては, 金融工学分野で用いられるリスクという概念を導入し, リスクカーブや, バリューアットリスクといった評価手法を用いる. 具体的には, 健岩部については岩盤等級分類に基づいて, 支保工を選択し掘削コストを算出する手法をとる. 対策工の施工を要する破砕帯の出現あるいは突発湧水等が発生する可能性の評価については, 不連続性亀裂岩盤における地下水解析に用いられる亀裂ネットワークモデルを適用する. さらに建設コスト評価手法を, 実際の岩盤データを用いて検証し, 掘削コストおよび対策工の施工コストからなるトンネル建設コストの評価結果について示した.
  • 宮本 能久, 松下 博通, 榎本 碧
    2006 年 13 巻 p. 115-126
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    現伍多くの地方自治体の公共施設のアセットマネジメントは, LCC (Life Cycle Cost) 型のアセットマネジメントが主流となっている. しかしながら, 今後は, 市民が望む真の豊かさや都市像も考慮した施設の価値を最大化するNPM (New Public Management) 型のアセットマネジメントを構築していくことが重要である. この目標を追求するため, 九州大学の教員と福岡市職員で, 福岡市の事例を題材に意見交換会を実施した.
    本研究は, 意見交換会の資料・意見の分析により, 「福岡市が推進していくべきアセットマネジメントの将来像はどのようなものか」を検討し, 提案するものである. 福岡市型アセットマネジメントでは, 価値を最大化するために, 公共施設の計画・建設・維持管理の各段階で, 6種類 (施設維持, 建設, 財務, リスク, バリュー, 環境) のマネジメントから成るフレームワークで行うアセットマネジメントに移行することが重要であり, また, それを実現するためには, 組織マネジメントの実施や施設データの統合, 市民や学識経験者・専門家との連携強化が必要であることを示した.
  • 南部 雄一郎, 鈴木 達也, 秀島 栄三
    2006 年 13 巻 p. 127-134
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    社会資本整備へのアセットマネジメントの導入において、一つには維持管理計画の合理化が重要であるが、さらにこれを実践するためには、従前からの維持管理業務をアセットマネジメントに沿う形に修正していくことも必要である。そこで本研究ではまず高速道路施設の維持管理業務の事例を調査し、UML (Unified Modeling Language) を用いて業務プロセスの記述を試みる。そしてUMLモデルを用いてアセットマネジメントの考え方を反映させた業務プロセスの (再) 設計を試みる。以上の手順を通じ、考察を加えることにより、社会資本施設の維持管理業務を対象とした業務プロセス改善の方法論の構築を目指す。
  • 小池 則満, 田代 直人, 内藤 克己, 高橋 郁夫, 正木 和明
    2006 年 13 巻 p. 135-144
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    我が国における地震防災に対する取り組みのひとつとして、リアルタイム地震情報の利活用が議論されている。特に、地震の主要動が到達する数秒から数十秒前に警報を発して注意を喚起するシステムの運用がさまざまな分野で開始されている。先行分野のレビューおよび建設業で現場代理人を務める方へのアンケート調査を通じて、期待される点や問題点を、さらにシステム導入によるリスク低減可能性についての考察を行うことを目的とした。アンケート調査の結果等に基づいて考察した結果、主要動到達までの数秒-数十秒という短い時間に建設現場としてどのような行動を起こせるのか考えることや、システム導入における費用対効果を明確にする必要性があること、などを明らかにした。
  • 長谷川 信介, 大津 宏康
    2006 年 13 巻 p. 145-152
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    山岳トンネル建設工事においては、設計段階における地山評価と実際の地山状況との乖離により生じる工事費の増加が問題となっている。このような乖離が生じる原因として、設計段階における地山評価の不確実性が挙げられる。事前調査においては、経済的な制約により、限られた調査数量しか実施できず、このことが地山評価の不確実性を大きくさせる要因と考えられるが、現状では工事費の削減とともに調査費も削減されており、地質調査による地山評価の不確実性の低減とは逆の方向に向かいつつある。このような状況を生み出す1つの要因は、事前調査の段階で、地山評価にどの程度の不確実性が含まれるかについて十分説明できていないことにあると考える。
    著者らは、設計段階と施工段階での地山評価の乖離に伴う工事費の増加リスクを事前調査の段階で評価することが重要と考える。そこで、本研究では、山岳トンネルの事前調査において主要な調査手法である物理探査、なかでも屈折法弾性波探査について、地山評価の不確実性評価における現状の課題を整理するとともに、不確実性の評価の試みを行った。
  • 高木 元也, 中村 隆宏
    2006 年 13 巻 p. 153-160
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    GDPの約1割を占めわが国の基幹産業である建設業は労働災害が多く、特に中小建設業者の労働災害発生率は高い状況にある。このため、厚生労働省第10次労働災害防止計画において、建設業は重点対策業種に指定されるとともに中小企業の安全確保が基本方針の一つに掲げられ、「中小建設業者」の労働災害防止は喫緊の課題に位置づけられている。
    一方、近年の重大労働災害の原因の一つに危険性・有害性の調査とそれに基づく対策の不十分さが指摘されており、今後の対策の方向には、事業場における事業者の自主的なリスクマネジメントの推進が求められている。
    しかしながら、単品受注生産で日々作業内容が変わり、多種多様な専門工事業者が混在する建設現場において、中小建設業者等事業者自らが危険・有害要因を特定することは困難が予想され、科学的・体系的に危険・有害要因を特定化する手法の確立が必要である。
    本研究は中小建設業者における労働災害の更なる減少を目指し、建設現場の特性を踏まえた最適なリスクマネジメント手法を確立することを目的に、中小建設業者の建設現場における危険・有害要因の特定化に関する事例研究を行った。
  • 中村 裕司, 保田 敬一
    2006 年 13 巻 p. 161-170
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 公共事業に対する改革の一つとして注目されているNPM (New Public Management) を, 現在の二者構造発注形態および三者構造発注形態に適用した場合の利点, 問題点を検討する. このNPMの流れをうけ, 新しい公共事業の仕組みとして海外でも実施されている第三者の事例として, ファシリテータやワークショップ, アウトリーチ・ブリーフィングなどの発注者の選択肢の公平性チェックや, ピアレビュー, チェックエンジニア, パートナリング, DRB, アービトレータ, ミディエイター, インスペクターなどの発注者の事業執行水準の妥当性をモニターする事例を示す.
  • 勝俣 陸男, 草柳 俊二
    2006 年 13 巻 p. 171-188
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    琵琶湖疏水は我が国の近代国家建設に向けて最大規模の建設投資を必要としたプロジェクトである。だが、工事記録は残されているものの、政策者達のマネジメント過程を示した資料は殆ど存在していない。本論文は、琵琶湖疏水完成による経済波及効果を解析し、当時の政策者達がプロジェクトにどのような効果を期待し、どのように計画され、実施されたかを現存する資料と経済分析手法を用いて検証するものである。経済波及効果の解析に必要な最古の京都府産業連関表は昭和35年度に作成されたものである。このため、RASプロセスを用いて琵琶湖疏水が完成した頃の産業連関表を推定し、疏水完成による当時の京都府の産業構造の変化を定量的に解析する。さらに産業構造の変化から生ずる便益が、当時施された財務管理と工事工程管理に如何に関連していたかを解析すると共に、当時の政策者達が行ったプロジェクトマネジメントと現代の公共事業マネジメントとを比較し、今後の我が国における公共事業のマネジメントの方向性を見出すことに役立てる。
  • 山浦 直人
    2006 年 13 巻 p. 189-200
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    入札談合事件が相次ぐ中、入札契約制度改革は公共事業に対する信頼性の確保や執行プロセスの透明性向上の観点から緊急かつ重要な課題である。長野県の入札契約制度改革では、競争性・公平性等を確保するため、従来の指名競争入札から「地域要件等を付した郵送方式・事後審査型一般競争入札」を導入し、一定の成果をあげるとともに、企業の意欲や技術力を反映できる入札方式などの多様な入札方式が試行されている。本研究では、総合評価落札方式など長野県の試行結果について整理、考察し、今後あるべき入札方式の多様化に関する課題をまとめ、特に予定価格制度の見直しなど入札契約方式の多様化を進めるにあたり、解決の方向などについて検討する。
  • Xiangrong DU, Tsunemi WATANABE
    2006 年 13 巻 p. 201-212
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    In China, public services have been delivered to citizens at low prices and subsidized by government to a great extent since 1949.Government directly invested, constructed and operated public infrastructure. However, the single source of government investment could not satisfy the increasing demand on infrastructure projects.Moreover, the direct government investment and management of public utilities resulted in poor construction performance.In addition, the monopolistic operation of state-owned companies caused low operation efficiency, striking resources waste, and heavy fiscal burden due to the lack of specific obligation division between government and state company.
    From 1994, the Chinese government began to attract foreign companies to participate in the investment, construction and operation of infrastructure projects mainly through BOT method.Since the China's entry into the WTO, the domestic private companies have been encouraged to invest and operate infrastructure projects, too.However, many privately financed infrastructure projects still encountered difficulty originated from excessive or inadequate government obligation.
    The proper obligation division between government and private company becomes the key issue in infrastructure project planning.The authors aim to propose a proper project planning model which shall fit all kinds of infrastructure projects with various fund origins.The proposed planning model shall include a comprehensive planning framework and a six-step planning process.In particular, the financial indicator, i.e.self-reimbursement ratio is introduced for correct appraisal of project feasibility and proper obligation division between government and project company.
  • 吉川 勝秀
    2006 年 13 巻 p. 213-227
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    過去約100年間に急増した人口が今後減少に向かう日本では, 流域・流域圏というスケールにおいて, 喪失した水物質循環や生態系, 景観を復元しながら, 自然共生型の持続可能な発展を目指すことが求められる.本論文では流域・流域圏の捉え方について整理するとともに, その再生シナリオの必要性について述べた.また国内外の先進的な実践事例・計画をその流域圏の形態・スケールとの係わり, 再生・形成目標から分析し, それらを考慮した上で自然と共生する流域圏・都市再生シナリオのモデルを提示した.
  • 若山 寿之, 永島 慈
    2006 年 13 巻 p. 229-236
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    社会基盤整備事業に携わる建設企業が経営合理化のために会社分割を行い新会社に建設事業を移す場合は、基盤整備に関わる工事や営業活動が円滑に継続できることが社会的な使命である。本論文では会社分割を実施する場合に直面する課題と解決策および今後のあり方について示すことを目標とし、これから会社分割を計画する建設企業にとって有効なマネジメントのとなることを目的としている。
  • 関口 信一郎
    2006 年 13 巻 p. 237-246
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    土木史の研究および教育は, 土木技術や技術者としてのあり方を考える上でも重要な意義を有している。しかし、土木技術者にとって極めて身近な事象であると感じるためか史料の選定、操作、仮説および結論を導く過程における論理の展開など、研究および教育の実施方法について課題は多い。
    我が国初の本格的外洋防波堤である小樽港北防波堤を設計・監督した廣井勇博士は名著「築港」を始め港湾調査報文、築港工事報文など多くの記録資料を遺している。廣井勇博士によって近代港湾建設の科学と技術は我が国に移植された。
    北海道開発局小樽港湾事務所では2003年より毎月定期的にゼミナールを開催し, 歴史研究家の指導を得て廣井勇博士が遺した記録資料を読み解き、小樽港北防波堤を照合させることによって廣井精神と廣井工学を探求してきた。その成果については昨年から公表しているところである。
    本稿はゼミナールの経験を踏まえ, これからの技術者像、倫理、技術教育に有用な土木史のあり方に検討を加え、土木史研究を進める上で必要な要件および研究方法を提示する。
  • 吉村 充功, 池畑 義人, 山下 彰彦, 田村 真輝, 三浦 正昭
    2006 年 13 巻 p. 247-254
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    建設産業では, 若年者の就職離れなどにより, 他の産業に比べ高齢層の割合が高くなっている. このような状況は地方ほど厳しくなっており, 近い将来に迎える大量定年退職時代に向けて, 建設企業がどのような問題を抱え, またそれに対応できる人材がどのようなものかを明らかにする必要がある. その上で, 高等教育機関である大学土木教育の効果的な改革の方向性を検討する必要がある.
    本研究では, 以上の問題意識に立ち, 地方の建設産業を支える中小建設企業に対して, 経営上の課題および必要な人材についての意識調査を実施した. これらを分析した結果, 企業が抱える課題としては, 「原価管理の徹底」, 「若手の育成」, 「受注量の増加」が上位となり, 企業の利益確保策のほか, 若年者育成が問題となっていることが明らかとなった. また, 大卒者に求める能力・資格としては「やる気」, 「責任感」といった基礎的な人間力のほか, 「パソコンの使用技術」や「コスト感覚」といった項目が上位となった. 一方で, 実際に採用を希望する企業が大卒者に求める能力・資格について, 数量化理論II類を用いて分析した結果, 「時事ネタの知識」, 「技術者倫理」といった情報力や倫理観の項目が強く反応し, 今後の人材育成の方向性についての知見を蓄積することができた.
  • 藤崎 雄滋郎, 小澤 一雅
    2006 年 13 巻 p. 255-262
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    ケースメソッドは、元来ビジネススクールやロースクールで実際に発生した問題をケースとして作成し、それを用いて討議を行う授業形式で、知識を一方通行で伝える講義形式の授業と比べて、より実践的な力を身につける効果があるといわれている。本研究では、映像ケースの作成からケース討議までの過程の中で、討議にむけた準備、討議の進め方、討議参加者への効果の3点に着目した。ケース討議の進め方については、実践経験及び進行役としての豊富な経験を有する方が行うケース討議への参加経験から整理する。また、討議にむけた準備段階では、ケースの改定を目的とした熟達者への映像ケースの視聴によって、映像ケースが熟達者の持つマネジメント技術の表出を促進する効果があること示された。参加者への効果については、討議参加者へのアンケートを中心に3回のケース討議の試行をまとめる。その結果、参加者の組合せを、熟達者と未熟達者が混在した状態にすることで、熟達者の具体的なマネジメント技術が表出し、熟達者から未熟達者へ、その技術の伝承が可能であることが示された。
  • 春名 攻, 鈴木 隆嗣, 上原 一展, 藤野 良樹
    2006 年 13 巻 p. 263-274
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    今日のわが国の社会・経済状態は、経済的混迷を背景に大きな変革期を迎えているといえる。そこで都市が良好な環境を保ちつつ、この様な激変する世の中においてこれらに遂次しなやかに対応していくためには、現在の都市機能の構造を改変するという抜本的な取り組みが必要であると考える。特に、財政的に逼迫している地方都市地域において、少ない財源で効率的・効果的に実現されるべきであり、都市の全体設計を検討する都市機能整備構想の段階からまちづくりへの意図を取り入れていくことが重要だと考えられる。
    したがって本研究では、まちづくりにおける都市機能の構成に関する検討、つまり、将来都市機能-構造システムに関する検討が非常に有用であると考え、都市がめざす将来像の効率的・効果的達成のための土地利用構想計画段階における将来都市機能-構造システム設計に関して方法論的な検討を加えることとする。これは、現在の都市機能の質的・量的な配分を、新たな都市整備により、改変し望ましい都市機能-構造システムの創造により、これらの都市開発・整備へのニーズを充足しようという試みである。このための検討ツールとして、将来都市機能-構造設計を効果的・効率的に行うための数理計画モデル、すなわち都市機能-構造システム設計モデルを構築し、滋賀県甲賀市を対象に実証的な検討を通してその有効性を検証していくこととした。
  • O Rajendra NIRAULA, Shunji KUSAYANAGI
    2006 年 13 巻 p. 275-288
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    Japan's official development assistance (ODA) has been providing the major resources for socio-economic development in many developing countries. Japan's contribution in hard infrastructure development has been dominating other soft development like human resources and technology development in recipient countries. Recipient countries especially low-income developing countries are ever dependent on developed countries for human resources and technology for their domestic infrastructure development. In addition, the insulated project execution system of the Japanese grant aid projccts has influenced the international competitiveness of Japanese contractors and consultants to expand overseas business. The new scheme developed in this study, based on the Nepalese and Cambodian contexts, integrates the perspectives of recipients as well as donors. Strengthening universities and technology development system in developing countries, and using alternative project delivery system in ODA project execution have been recommended to address recipients' as well as donors' industries issues and to improve the efficiency and efficacy of ODA. The new ODA scheme has been started to implement in Cambodia and it has enabled to produce a new product for Cambodian rehabilitation.
  • 中間法人制度を用いた地域参加型運営システムの検討
    春名 攻, 久米 達也, 久保 誠一郎, 桜井 正博
    2006 年 13 巻 p. 289-300
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    近年、地方都市中心市街地の衰退・空洞化が顕著になり、問題はより深刻化している。このため、中心市街地の再開発事業に関しても消費者ニーズや時代の流れに沿った開発の必要性が迫られている。そこで、効率的・効果的な中心市街地活性化をめざし、変化する時代に対応し魅力ある都市を創出するために、市街地整備と商業活性化対策の一体的事業整備を行うことによって、個別ではできない新都市機能の導入や既存都市機能の更新、レベルの高いサービス環境等を実現する方法が、大変有効であると考えた。
    本研究では中心市街地において、他都市にはない魅力的な雰囲気を持った都市整備事業とするために、当該地区に公園と商業施設を組み合わせた複合商業公園整備を提案し、一体的事業計画案を検討した。また、計画案の実現化方策として、商業集積地区において個別商店レベルでは解決が困難な問題への対応策として、個別商店の組織化・協調体制を組み込んだ運営システムの検討を行った。そして、一体的事業整備について、数学的手法を用いたモデルの定式化・構築を行い、中心市街地活性化をめざした土地利用・施設整備事業構想に関する方法論を論じた。さらに、一体的事業整備を推進させる方法として、土地の取得から整備・運営に至るまでに中間法人製度を用い、地域住民を主体とした新しいマネジメントシステムについて併せて検討を行った。
  • 大津 宏康, 赤木 舞, 松山 裕幸, 大谷 芳輝
    2006 年 13 巻 p. 301-314
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    従来より, 高速道路に隣接する切取り斜面の対策工として吹付けコンクリートを用いた法面防護工が多くの斜面において適用されてきた. しかし, 供用後の時間経過と共に, 多くの原因により, 吹付けコンクリートの表面でのひび割れ, 表面のうき・はく離に加えて, 切取り斜面表面を覆う吹付けコンクリートが背面地山の一部を含めたすべり (せり出し) が確認されつつある. このため, 道路管理者は吹付けコンクリート斜面の性能を規定する基準や対策工の施工時期の判断基準を設定することが求められている. しかし, 吹付けコンクリートの暴露条件, 材料・施工条件および背面地質の条件が様々であるため, 現状ではの作成に至っていない.
    このような観点から, 本研究では, 吹付けコンクリート工の劣化の内, 材料自体の劣化特性には直接言及せず, 背面地山の風化・劣化特性に着目する. 具体的には, 背面地山の風化・劣化に伴う強度低下過程について原位置で実施された速度検層結果に基づき分析を加える. また, その強度低下特性については, 非定常確率過程を用いてモデル化し, 信頼性工学に基づく維持補修費の評価方法を提案すると共に, この手法を原位置斜面に適用し, 維持補修費を判断指標とした対策工の施工時期に関する意思決定方法の適用性ついて検討を加える.
  • 尾崎 哲二, 佐鳥 静夫, 角南 安紀, 藤長 愛一郎, 松川 一宏
    2006 年 13 巻 p. 315-323
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    本論文は建設マネジメント委員会環境修復事業マネジメント研究小委員会 (下池季樹小委員長、三村卓副小委員長) における研究内容の一部を取り纏めたものである。
    土壌・地下水汚染問題の解決を目指した土壌汚染対策法 (以下、土対法) の成立や関連する条例などの整備により、環境修復事業が全国的に進められている。土対法で定義される汚染をはじめ定義されない場合においても、これらの法令に準拠し、調査、計画、対策が実施されている。しかし、土対法などの法令は汚染の定義や環境修復事業の枠組を示しているものであって、実際の事業では様々な問題が生じている。特に有害物質を起因とするリスクの顕在化が多くの事業でみられ、これを低減あるいは防止することは事業を進める関係者にとって重要な課題となっている。
    ここでは、環境修復事業におけるリスク顕在化をどのようにすれば防止できるのか、そのマネジメント手法を提言するにあたり、事業全般におけるリスクを抽出し、それが顕在化した場合の影響について分析を行った。
  • 三橋 美洋, 志水 公敏
    2006 年 13 巻 p. 325-336
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    供用区間における維持修繕工事及び保守点検業務などに係る作業は、連日実施され、交通流に影響を与える交通規制を伴うものがほとんどであり、道路利用者や沿道住民へ多大な影響与えることになる。このため、維持管理作業に対する予定及び実績の管理は、関係機関との調整をとりながら、正確かつ効率的に行われなければならないが、そのことに多大な労力と時間を要していたのが現状である。
    名古屋高速道路公社においては、このような作業予定管理を、コンピュータネットワーク技術を用いてシステム化し、一連の手続きを標準化し、一元的かつリアルタイムな管理を実現するとともに、業務効率の向上及び業務負荷の軽減を図っている。
    本稿は、当該システムについて概説するとともに、その導入効果の検証及び考察を行うものである。
  • 太田 和良
    2006 年 13 巻 p. 337-344
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    東南海・南海地震など、大規模で広域的な災害が発生した場合には、孤立する地域が多数発生し、行政職員を中心とする災害応急対応には限界が生じることが容易に想定される。このような場合、行政と地域住民の連携が不可欠であることはもちろんであるが、孤立状態が長期化すれば、地域の土木技術力を活用し、それぞれの地域が自発的に復旧に向けて活動を始めることも必要となる。
    そこで、和歌山県では官民の技術者が協力して災害対応にあたることをめざし、防災技術エキスパート制度を開始した。制度が災害時に有効に機能するためには平常時からの参加者の連携と意識・能力の向上が重要であると考え、県では防災技術研修会を開催した。その中で、研修の一環として災害時の状況ととるべき行動についてイメージを広げてもらうことを目的として、意識・能力向上に効果のある選択式訓練に取り組んでいただいた。
    今回は選択式訓練を初めて民間技術者に適用した事例として、特にYN式訓練の結果を踏まえ、官民の防災に対する意識の相違点を明らかにし、今後、地域の防災技術力を活用した災害応急対応を効果的に実施するためには、平常時において何に取り組んでいくべきかについて考察する。
  • 曽根 真理, 木村 恵子, 並河 良治
    2006 年 13 巻 p. 345-354
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    グリーン購入法の政策的課題の一つは、評価途上の品目について、評価方法が確定しない状況で、説明性・透明性のある評価を行わなければならないというものである。平成18年6月に土木学会はこの政策課題解決のための提案を国土交通省に対して行った。本稿は、提案のうち業務執行体制下に係わる部分について検討経過の報告を行うものである。
    グリーン購入法は、政府が率先してある環境物品を調達することでその環境物品の普及を促すことが目的である。率先として調達するという性格上、評価途上の物品が含まれることがある。また取り扱う環境分野は、地球温暖化、廃棄物・資源、有害化学物質、生物多様性、その他と幅広いことから、これらの環境要素を統合的に評価する技術が必要とされるが、そのような技術は現在のところ開発されていない。一方、特定調達品目へ指定されると国等の各機関はこの品目を原則として調達しなければならないため、特定調達品目の指定は最終的には閣議により決定される。このことから、指定にあたっては高い説明性と透明性が求められる。このように、評価途上の品目について、開発途上の評価手法を用いて、説明性・透明性の高い評価を行わなければならない。
    国土技術政策研究所は、土木分野の特定調達品目の技術評価を複数の独立行政法人と連携しながら実施しており、土木学会に対して、グリーン購入法の運用上の課題である評価基準の明確化及び詳細化等に関して検討依頼を行なった。これを受けて土木学会は「グリーン購入法の公共工事の技術審査に係わる運用方針検討委員会」(委員長: 東京大学小澤一雅教授) を設置し、平成18年6月に報告書を作成した。この報告書は、評価基準の明確化、詳細化のみならず、評価業務執行体制のあり方をも含むものである。
  • 武藤 信義, 那須 清吾, 草柳 俊二
    2006 年 13 巻 p. 355-370
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    わが国では「国土の均衡ある発展」を目的に、戦後、様々な地方活性化策 (1. 中央官庁政策活用型、2. 外部経済導入型、3. 内部経済活性化型) が展開されたが、それが有効に作動した地方と、作動しなかった地方が画然と存在する。高知県等の首都圏・大都市圏から離れた国土周辺県 (秋田、青森、徳島、鹿児島、和歌山、島根、岩手、長崎、宮崎、等) が「取り残された地方」である。
    「取り残された地方」の自立化には、地方産業活性化モデルが不可欠だが、これまで取られてきた諸施策が旨く作動しなかった点、財政改革進展の中で「取り残された地方」の自立化が強く求められている点を踏まえ、実効性ある新たな地方産業活性化モデルを創造する意義は大きい。
    本論文は、「取り残された地方」で経済自立化が旨く行かなかった理由を究明し、その活性化モデルを提唱する。その上で、「取り残された地方」の典型である高知県を取り上げ、活性化モデルを具体的に適用し、経営資源として木材資源に着目して、「取り残された地方」の経済自立化の過程を実証的に考察する。
    尚、本文中の図表は、主に、該当する記述の論理構造を一覧する便宜の為に付した。
  • 吉川 勝秀, 本永 良樹
    2006 年 13 巻 p. 371-376
    発行日: 2006/12/05
    公開日: 2010/06/04
    ジャーナル フリー
    首都圏での自然と共生した流域圏・都市の再生に資することを目的として, 水と緑の環境インフラの変遷および現状を把握し, 今後の都市計画, 国土計画における活用について考察した. 首都圏における環境インフラはこの百年間で大きく喪失したが, 今なおまとまった緑や都市の骨格となりうる河川・水路が残されていることを示した. そして, 首都圏の水と緑の環境インフラの保全・再生では, これまでは取り上げられていない中川・綾瀬川流域の河川網や水田を例に, それらが保全・再生すべき自然環境として認識されてよいことを示した.
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