1995 年 3 巻 p. 163-172
1972年の労働安全衛生法施行後の約10年間において建設業の労働安全の状況は飛躍的に改善されたが、最近10年間は著しい改善が見られない状況にある。このような現状を打開するためには、従来の安全対策の限界を認識し、新たな安全対策を打ち出す必要性があると考えられる。本研究では、事故の被災者に対する1対1の聞き取り調査を重点とする事故の追跡調査および建設現場における安全管理体制に関する調査を行った。従来の事故報告書には報告されていない事故の背景的要因などの事故発生のメカニズムを正確に調査・分析するとともに、建設現場の重層下請構造、元請と下請相互間の請負契約における安全対策を実施する場合の費用・役割・責任の取り決め状況、元請業者・下請業者の安全管理能力、安全に関する指示・情報の流れを明らかにし、現場の安全管理体制と労働災害との関連を考察することを目的とした。