抄録
公共工事着工統計の分析を行い、単年度予算の制約である 「工事の年度内完成」 を 「工事の年度末完成」 という形で担保しているために発注の変動が生じ、年度末の工事集中が引き起こされていることが明らかになった。
インタビュー調査および文献調査より、受注側にとっては毎月の出来高が平準化することが望ましく、その効用は、(1) 人員体制と業務量のアンバランスが解消され、人的資源の有効活用ができること、(2) 企業の財務状況が安定し経営の健全化につながること、であることが分かった。効用の (1) を定量的に評価することを試み、資本金階層1, 000-9, 999万円の企業について、最大549-3, 171億円のコスト縮減が可能であることが分かった。公共事業全体では1, 098-6, 342億円になると考えられ、最終的には工事価格の低減という形で国民の効用へと転化されると共に、品質向上という質的効用が得られると思われる。