抄録
矢板式岸壁の地震直前の応力状態 (初期応力状態) が, その地震時挙動に与える影響について, 有効応力解析プログラムFLIPを用いて検討した。初期応力状態の解析は, 矢板式岸壁の施工過程を模擬することを念頭に, 第1段階は海底面以下の地盤部分のみ, 第2段階は矢板本体のタイロッド取り付け点を固定した条件で矢板背後地盤を導入, 第3段階 (自重解析最終段階) は矢板本体のタイロッド取り付け点に人為的に発生していた節点力の解消, の3段階で解析した。このような多段階自重解析による初期応力状態の基に矢板式岸壁の地震時挙動を解析したところ, 施工過程を無視した単純1段階自重解析による初期応力状態に基づくものよりも, 矢板式岸壁の地震残留変位, 発生応力とも著しく小さい結果が得られた。