抄録
選択的注意をはじめとする認知過程が立位姿勢制御におよぼす効果を検証する目的から,健常者に対して,静止立位のみを維持する単一注意要求課題,および静止立位の維持(第1課題)と視覚・聴覚性提示による引き算(第2課題)を同時に遂行する同時二重注意要求課題を課し,各課題遂行中の立位姿勢動揺を解析した。同時二重注意要求課題遂行中における立位姿勢動揺は,単一注意要求課題のそれに比べて有意に減少し,同時二重注意要求課題の遂行が立位姿勢の安定化制御に対して促進性に作用することが認められた。こうした現象を背後で支えるメカニズムについて、選択的注意における資源依存型処理過程とデータ依存型処理過程の側面から論議した。