本研究は, 滋賀県において1970年代後半におきた「石けん運動」をゲーム理論的視点からとりあげ, 同運動が「共有地の悲劇」ゲームであったと仮定することによって, 同運動の前後において大きく変容したであろう県下住民の粉石けん使用に関する利得マトリックスの構造 (利得差) を, 大学生を対象としたゲーム実験と同県における粉石けんの使用率の変化とから推計, 推計の過程と結論から仮説の妥当性を検証しようと試みたものである.その結果として, 仮説の検証までにはいたらなかったが, 「共有地の悲劇」ゲームにおいてはバンドワゴン効果が認められないこと, 本研究で想定したゲームの場合, 石けん運動の前後において人々の粉石けん使用に関する利得マトリックスの利得差が最大5から最小2まで変化したであろうことが明らかになった。