抄録
本研究では10年にわたりまち歩きを続けている『なにわ町方あきんど会』の活動記録である引札を分類し、「名づけ」という行為が環境認識の変化を促すかを、「対象物」「名づけ方」「対象物のとらえ方」という三軸から分析した。引札の分析からは、対象物への注目点にはそれほど個人差は出ないものの、その「とらえ方」と「名づけ方」には、大きく2タイプー「コレクター型」と「エディター型」。があると考えられた。環境認識の変化としては、「エディター型」は、 モノと周囲とのかかわりについて深く考える可能性も秘めているが、「コレクター型」になると、自分の“まなざし”にもとつく見方が固定しがちであり、逆に認識を深める作用を鈍化させる怖れもある。この場合は、あらたな見方の刺激や、「名づけ」の深層を見るようなしかけがさらに必要とも考えられる。