抄録
近年, バングラデシュでは, 飲料水のヒ素汚染が深刻な問題となっている. しかし, バングラデシュでは, ヒ素汚染問題だけではなく, 洪水, 渇水, 塩害など多様な大災害を有しおり, さらに経済的な貧しさもともなって, ヒ素汚染に対して非常に脆弱であるといえる. 本研究では, ヒ素汚染問題を考えるにあたって, 現地の社会環境を十分考慮する必要があるという観点から, ヒ素汚染問題と社会環境を明確化し現地で受容可能な代替案を総合的に考察することを目的とした. そこで, 調査票を作成し, 実際に現地でインタビュー調査を行った. 本稿ではまず, ヒ素汚染問題を考える上で, 特に水の満足度及び不幸せさに着目し, 数量化理論を用いてモデル化を行い, 現地住民の抱える問題の明確化と, その地域比較についての考察を行った.