世界自然遺産候補地の奄美大島と徳之島の原生的照葉樹林において森林調査区を設定し,動植物のモニタリング体制の構築を進めている.本報告では,奄美大島の3標高点(標高200,400,600m)の原生的な照葉樹林を構成する樹木と,林床植生を構成する植物群についての結果を報告する.DBH4.8cm以上の樹木は標高200m調査区で2728本52種,400mで2652本64種,600mで3813本53種が確認された.種ごとの大径木の分布パターンから400m調査区の方が,その他の調査区より発達した遷移段階にあることが示唆された.標高200m調査区における低木層の植被率は微地形によって大きく変化し,尾根(約72%),斜面(約68%),谷(約54%)であった.一方,草本層の植被率は逆のパターンを示し谷,斜面,尾根の順に大きかった.出現種はシダ植物が39種,草本植物が12種,低木が27種,高木が26種,つる植物13種であった.シダ植物と草本植物の出現種数は谷がもっとも大きく,斜面から尾根に移るにしたがって種数が小さくなる傾向が認められた.一方,低木種と木本種は斜面で最も出現種数が多く,谷と尾根では比較的少ないことが分かった.