ニホンジカ個体数が区画踏査法により調査されてきた宮城県金華山島で,小型無人航空機(UAV,ドローン)による島全体のシカ個体数観測手法を検討し,踏査法とのシカ発見頭数を比較した.島を10飛行区画に分割することで全島観測が可能なことを2019年3月に確認し,同年4月のドローン搭載熱赤外カメラによる夜間観測では,島全体で429頭のシカを検出した.同年3月の踏査実施区画(島面積の71.6%)に限ると,シカ発見頭数は踏査で380頭,ドローン観測で377頭だった.島の17.6%を占める常緑樹林におけるシカ発見頭数は,踏査がドローン観測の1.3倍であり,ドローン観測における常緑樹林内の頭数補正の必要性が示唆された.しかし,両調査で総数がほとんど変わらなかったことから,落葉樹林や草原の割合が大きい金華山島では,踏査と同等以上の精度でのドローン観測が可能であることが示された.