自然保護助成基金助成成果報告書
Online ISSN : 2189-7727
Print ISSN : 2432-0943
第32期プロ・ナトゥーラ・ファンド助成 国内研究助成
絶滅危惧種ヒメフウロにおける在来および外来系統間の生育特性の比較および交雑可能性の評価 ―ヒメフウロ保全研究グループ―
下野 嘉子姉川 盤音
著者情報
研究報告書・技術報告書 フリー

2023 年 32 巻 p. 128-133

詳細
抄録

ヒメフウロは,滋賀県,岐阜県,徳島県の石灰岩地にのみ生育するフウロソウ科の1年草である.石灰岩地という特殊な立地環境に分布が限定されていることから個体数が少なく,各県で絶滅危惧種に選定されている.一方,全国各地の路傍や林道沿いでもヒメフウロの生育が確認されており,海外から観賞植物として導入されたものが野生化していると考えられる.本研究では,全国26地点からヒメフウロの葉や種子を採集し,MIG-seq解析,圃場における栽培実験および交配実験を実施し,在来および外来集団の遺伝的分化程度,適応度,交雑可能性を評価した.その結果,日本には少なくとも2外来系統が侵入しており,1系統は主に北海道・東北を中心とした冷涼な地域に,もう1系統は東北以南の温暖な地域に分布していた.在来系統は,山域間および低標高集団と高標高集団の間で遺伝的な分化が見られ,標高の違いに応じた形態的な分化も見られた.これは各生育環境への適応の結果と考えられる.また,外来系統は,直射日光の当たる栽培条件下で在来系統よりも多くの種子を生産した.外来系統と在来系統間の交配実験より稔性のある雑種種子ができたことから,外来系統が在来系統の生育地に持ち込まれないよう注意が必要である.

著者関連情報
© 2023 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top