放射線防護分科会会誌
Online ISSN : 2432-6526
Print ISSN : 1345-3246
マルチスライスCTにおける被曝線量測定
赤木 憲明大川 義弘北山 卓一大野 誠一郎小林 久員山下 栄二郎延原 栄太朗森岡 泰樹
著者情報
解説誌・一般情報誌 フリー

2002 年 14 巻 p. 14-

詳細
抄録

【目的】マルチスライスCTにおいて,撮影スライス厚とヘリカルピッチの違いにより線量プロファイルがどのように変化するかをフィルム法を用いて測定したので報告する.【使用機器と方法】マルチスライスCTはAquilion Multi(TOSHIBA)を使用し120kV,50mAs,FOV32cmの条件で,ビーム幅の約14倍の撮影範囲をスキャンした.20cmφ×15cmのアクリル製円柱ファントムの中心と,12時方向の表面下1cmの測定用ホールに,半円柱状に加工した自作アクリルファントム(1cmφ×20cm)の間に幅1cmの短冊状に切った診断用X線フィルムUR-2(FUJI FILM)を挟んで装填し,撮影スライス厚(Raw thickness)を0.5mm,1mm,2mm,3mm,ヘリカルピッチを2.5,3.5,4.5,5.5とそれぞれ変化させ試料を得た.その試料の濃度分布を水ファントム/フィルム線量分布測定システムDYNASCAN(CMS)のModel 1710 Laser Densitometerを使用し0.25mm間隔で測定した.また,X線撮影装置KXO-50G(TOSHIBA)を使用し,Aquilionの線質とほぼ等しい46keVとなるように0.038mmのCu付加フィルターを加え線量-濃度曲線を求め,線量変換を行なった.【結果と考察】測定位置とヘリカルピッチの違いによる線量プロファイルの形状は,ファントム中心ではなめらかな単峰性の山形を示したが,表面下1cmでは凹凸の形状を示した.今回の測定パラメーターでは,いずれの場合も中心より表面下1cmの方が高い線量となった.Fig.1は12時方向の表面下1cmの測定位置において撮影スライス厚1mmで,ヘリカルピッチを変化させた線量プロファイルである.ピッチが小さいほど線量が多くなった.山の部分で比べるとヘリカルピッチ2.5では,5.5の約2倍の線量になった.Fig.2は同じく12時方向の表面下1cmの測定位置においてヘリカルピッチ3.5で,撮影スライス厚を変化させた線量プロファイルである.撮影範囲の違いによりプロファイルの広がりは異なるが,撮影スライス厚が薄いほど線量が多くなった.撮影スライス厚0.5mmでは,3mmの約1.6倍の線量になった.今回測定した32種類のパラメーターの組み合わせでは,表面下1cmでの最小線量は撮影スライス厚3mm,ヘリカルピッチ5.5で6.84mGy,また最大線量は0.5mm,2.5で29.2mGyで約4.4倍の差があった(Fig.3).今回行なったフィルム法を用いた被曝線量測定の利点としては,DYNASCANを用いることにより比較的簡便にしかも0.25mm間隔の高分解能で線量プロファイルを測定することができた.そしてCTにおける被曝線量を,他のX線検査と同様に撮影領域のある1点のX線量として評価することができた.また問題点としては,アクリルファントム中での線質の変化を加味していないことや線量-濃度曲線を求める段階で,半価層により評価した実効エネルギーをAquilionとほぼ等しくしたX線撮影装置で代用して求めたこと等があるが,これらについては今後検討する必要がある.【まとめ】1.フィルム法による線量測定は分解能に優れ,比較的簡便であり,マルチスライスCTの線量プロファイルの測定において有用である.2.マルチスライスCTでは撮影スライス厚,ヘリカルピッチの組み合わせにより被曝線量が変化する.薄い撮影スライス厚と小さいヘリカルピッチを使用する場合には被曝線量が増加するので,各装置の線量プロファイルの特性を理解しスキャンパラメータの選択を行なうことが必要である.[figure][figure][figure]

著者関連情報
© 2002 公益社団法人日本放射線技術学会
前の記事 次の記事
feedback
Top