2002 年 14 巻 p. 24-
【目的】品質管理は決められた方法で行うべきであるが,マニュアルを厳守するあまり,品質管理を行うことが面倒なこともある.そこで,本研究は乳房撮影装置の線質測定時,すなわち半価層測定時の電離箱の設置誤差許容範囲および計算方法の違いによる誤差を知ることによって,半価層測定時の煩雑さを軽減することを目的に行った.【実験方法】(1)ヒール効果の影響は,電離箱を管軸方向で移動させて調べる.(2)前方散乱の影響は,電離箱と圧迫板(吸収板)との距離を変えて調べる.(3)空気吸収の影響は,電離箱をX線管焦点に近づけて調べる.(4)計算方法の違いの影響は,マニュアル(技術学会叢書14-2)通りの計算方法(対数補間)と直線補間による計算方法を比較する.【結果】結果のグラフを下記に示す.縦軸はマニュアル通りに求めた半価層値を基準としている.(1)ヒール効果の影響は,電離箱を基準位置から約4cm陽極側へ移動すると現れる(図1).(2)前方散乱の影響は,電離箱と圧迫板との距離が約10cm以上になると無視できる(図2).(3)空気吸収の影響は無視できる(図3).(4)マニュアル通りに半価層値に極めて近いアルミニウム厚を使用したときの測定値を用いると,直線補間を行っても対数補間と同じ半価層値がえられる(図4).(5)最初の測定に使用する0.1mmアルミニウム厚と必ず半価層値を越える0.5mmアルミニウム厚を使用した測定値を用いても対数補間を行うならば,品質管理に問題はない.(6)(5)と同じ測定値を用いて直線補間を行うことには問題がある.【まとめ】研究結果の数値は撮影装置によって異なると思われるが,次のようにまとめることができる.(1)電離箱の設置はマニュアルにしたがってmm単位まで合わせる必要はない.(2)空気吸収の影響は無視できるので,圧迫板等からの散乱線を考慮しながら電離箱をX線管焦点に近づけることができるので,撮影装置のX線管負荷を軽減できる.(3)マニュアル通りに半価層値に極めて近いアルミニウム厚の測定値を用いて計算するならば,対数補間でも直線補間でも同じ値が得られる.(4)対数補間で計算するならば,0.1mm厚と0.5mm厚のアルミニウムを用いた測定値を使用しても品質管理には大きな問題とならない.[figure][figure][figure][figure]