放射線防護分科会会誌
Online ISSN : 2432-6526
Print ISSN : 1345-3246
ガラスバッジを用いた乳房撮影時の患者被曝測定の検討
山本 友行長元 祥子野村 孝之水島 隆田村 鋒男越田 吉郎安富 千鶴眞島 義彦寺部 充昭
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2002 年 14 巻 p. 34-

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抄録

【目的】乳房撮影の普及に伴い、受診者に与える放射線被曝の影響が問題になる。乳房自体の被曝については、すでに平均乳腺線量によって求められている。今回、人体ファントムを使用し、乳房以外の眼窩、甲状腺、上腹部および下腹部などの被曝線量をガラスバッジを用いて測定した。また、TLDとの比較も検討した。【使用機器】ガラスバッジ:広汎用FS型(千代田テクノル)TLD:MSO-S線量計:Radcal 9016型 90×5-6M(6cc)乳房撮影装置:MAMMOMAT 3000 ファントム:人体スライスファントム(京都科学) アルダーソン頭部ファントム アルダーソン下腹部ファントム BR12(乳腺50%,脂肪)【方法】1)人体スライスファントムと頭部ファントムを組み合わせ、乳房部に3.5cm厚のBR12を用い、模擬的にCC方向及びMLO方向の撮影体位をモデル化した。2)ファントムの眼窩部、甲状腺部、上腹部および下腹部位置にガラスバッジを配置した。3)管電圧27kV、50mAsで10回曝射した。4)TLDをガラスバッジと同一の位置などに配置し、同線量を曝射した。5)ガラスバッジは70μm線量当量および1cm線量当量、TLDは吸収線量を求めた。【結果】Fig1,2,3,4に結果を示す。(単位:μSvおよびμGy/50mAs) 1)眼窩部(水晶体)の被曝線量はFace Shieldにより、CC撮影、MLO撮影ともにほぼ0であった。2)CC撮影の甲状腺部の皮膚線量は70 μSvとガラスバッジの測定部位の中で一番高く、また、TLDの線量(17μGy)との差は多きかった。3)MLO撮影の上腹部の皮膚線量はガラスバッジで20 μSv、TLDで13μGyであったが、CC撮影の皮膚線量はほぼ0であった。4)下腹部の皮膚線量はCC撮影、MLO撮影ともにほぼ0であった。【考察】1)ガラスバッジを用い、乳房近傍の被曝線量が100 μSv以下であることが確認できた。2)ガラスバッジはその信頼度から測定最小値が100 μSvであるが、撮影4回以上の精密検査患者の個人被爆や日ごとの全患者被爆のモニターに用いることが可能と思われる。3)甲状腺部でのガラスバッジの測定値がTLDの測定値より数倍多かったのは、線束からの装着位置までの距離の違いによると考えられ、ガラスバッジによる甲状腺部の測定値には何らかの補正が必要と思われる。[figure][figure][figure][figure]

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© 2002 公益社団法人日本放射線技術学会
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