放射線防護分科会会誌
Online ISSN : 2432-6526
Print ISSN : 1345-3246
被曝線量低減を目的としたスポットフィルタの臨床評価
坂本 肇大島 信二長島 宏幸弓削 誠池長 聰芦沢 和成吉澤 和弥新井 誉夫秋山 三郎佐野 芳知
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2002 年 14 巻 p. 39-

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抄録

【目的】IVRにおける被曝線量低減を目的に、付加フィルタの形状を考慮したスポットフィルタを試作し報告した。スポットフィルタは付加フィルタの中心部をくり抜き周辺部で厚くなるような構造とすることにより、視野内の画質を一部変化させた。このため、中心部(病変部)は画質が優先され周辺部では画質低下を起こすが被曝線量を低減させることが可能となった。今回、スポットフィルタの臨床での評価を検討した。【スポットフィルタの特徴】材質は加工性が良く、入手が簡単であり、被曝の低減効果が高い銅板(0.1mm厚)を重ねて使用した。スポットフィルタの厚さによる画質(コントラスト)と線量(ファントム表面線量)の関係をFig.1に示す。フィルタの厚さが増すにしたがい、中心部のコントラストは改善され周辺部で低下し(Fig.1a)、表面線量は周辺部で低減された(Fig.1b)。臨床で使用したフィルタは0.1mmCu、1.0mmA1の付加フィルタと0.2mmスポットフィルタの組み合わせであり、スポットフィルタはI.I.上での大きが5cmと8cmを用いた。【方法及び結果】(1)臨床での使用状況 最近のスポットフィルタ使用50症例についての内訳をFig.2に示す。すべての症例がIVR時に用いられ、頭部領域が36例(72%)と最も使用例が多く、続いて腹部骨盤領域の9例(18%)、心臓領域の5例(10%)となった。また、初期のコリメータ上に固定使用していたスポットフィルタから、中心部(スッポト部)を遠隔操作による移動方式へと改良した。(2)頭部領域 Fig.2に示した期間に頭部領域IVRは全部で51例が施行され、スポットフィルタ使用例が36例であったため、使用率は70%となった。使用した症例は、AVM、CCFや腫瘍へのTAE、血管攣縮に対する動注やPTAである。特に、眼窩付近に病変が存在する場合、水晶体への被曝線量が低減された。(3)心臓領域 心臓領域IVRにおいて初期使用頻度が最も高かったが、PTCAはステントを用いることにより透視時間が大幅に短縮され、カテーテルアブレーションでは高精細透視により通常の付加フィルタ使用で電極カテーテルの観察が可能となったため、スポットフィルタの使用率は低下した。(4)腹部骨盤領域 腹部骨盤領域IVRにおいて、腎動脈・腸骨動脈のPTA、動脈瘤へのTAE症例に対し使用した。しかし、最も症例数が多いHCCへのTAE症例へは、病変の存在が多数あり限局していないことなどから応用は難しかった。【考察】IVRでの患者被曝低減には、透視による被曝線量を如何に減らすかが重要になってくると考える。フィルタの画質を優先するスポット部分を可動としたことにより、臨床での応用の幅が広がり、特に頭部領域での使用頻度が高くなった。付加フィルタは患者被曝低減、画質維持、装置負荷の三者のバランスが重要であり、スポットフィルタの臨床応用は有用であると考える。[figure][figure][figure]

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© 2002 公益社団法人日本放射線技術学会
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