放射線防護分科会会誌
Online ISSN : 2432-6526
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2方向外科用イメージの散乱線量分布測定による従事者の被ばく線量推定
徳倉 正人能登 公也藤井 茂久浅田 恭生大瀬 英是佐藤 保高井 洋次赤堀 竜一杉田 保北澤 英俊木野 村豊
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2002 年 14 巻 p. 41-

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抄録

1. 当院手術室では、2方向移動型外科用イメージの導入により外科手術での透視が増加傾向にあり従事者の被ばく線量の増大が懸念されるようになった。そこで室内空間線量分布を測定し従事者の被ばく線量の推定を検討した。2.方法 手術室にて、外科用イメージによる透視時の管電圧、管電流、時間を平成13年8月23日から11月5日までの腰椎すべり症の手術、計6件で調査した。透視条件はフルオートで行った。移動型2方向外科用イメージBIPLANAR400を用いて一次X線の半価層と散乱線量を測定した。一次X線の半価層は指頭型電離箱を使用した。散乱線量は管球焦点からの距離50cm刻みでの位置にて床面から高さ50cm、100cm、150cm、200cmで電離箱式サーベイメータにて測定した。測定値から散乱線量分布図を作成した。この時の測定条件は、調査した手術6件の平均値とした。空間線量分布から、手術室内の術者の立ち位置における積算線量を推定し、正面方向・側面方向における透視時間の比率をかけて換算した。手術中の術者の頚部、胸部、腹部のX線装置側にシーメンス電子線量計を装着し、被ばく線量を実測した。積算線量から1手術に対する1分間当たりの被ばく線量を換算し、散乱線による被ばく線量を求めた。3.結果 手術6件における、管電圧は80.0kV、管電流は3.0mA、透視時間は(正面方向・側面方向の合計値)12.0分、その割合は正面58.5%、側面41.5%であった。正面透視時における最大線量はオペレータA、B共に下肢での被ばく線量が最大となり、445.9μSv/hとなった。側面透視時ではオペレータAでは側面管球を中心にして円を描くように分布した。また、オペレータA・B共に100cmの高さで最大値を示しオペレータAでは31.7μSv/h、オペレータBでは777.1μSv/hが最大線量となった。オペレータAの実効線量は実測値から22.5μSv、線量分布から28.3μSvと1.26倍となり、オペレータBの実効線量は同様に57.2μSv、97.5μSvと1.70倍と近い値を示した。100mSv/5年の実効線量限度よりオペレータAでは線量分布からの28.3μSvより58件/月、オペレータBでは97.5μSvより17件/月という結果になった。4.結語 オペレータAの位置での被ばく線量は12分間の透視使用でオペレータBの位置での被ばく線量に対して約3.4倍となった。オペレータBの位置に立つ人は100mSv/5年の実効線量限度内で行えるのは透視を1件の手術で12分間使用した場合、17件/月となった。空間線量分布から推定した被ばく線量が実測値に対して近似値を示したため、空間線量分布からの従事者の被ばく線量の推定は有効であると考えられる。[graph][graph]

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© 2002 公益社団法人日本放射線技術学会
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