放射線防護分科会会誌
Online ISSN : 2432-6526
Print ISSN : 1345-3246
CRにおける胸部病室撮影での散乱線除去と画質向上 : 撮影管電圧と散乱線除去用具及びGridのMisalignment
竹内 吉人片桐 基博木下 一男浅田 恭生南 一幸江尻 和隆鈴木 昇一
著者情報
解説誌・一般情報誌 フリー

2002 年 14 巻 p. 42-

詳細
抄録

【目的】胸部X線単純写真における画質向上は、高管電圧撮影による診断領域の拡大と肋骨陰影の減退が必要不可欠である。また、それに伴い高格子比Gridによる散乱線除去が重要となる。しかし、病室撮影での胸部準高圧撮影における散乱線除去を目的としたr8:1 Gridの使用は、GridによるMisalignmentにより臨床上たびたび問題となる。今回、比較的Misalignmentの出現を来たさないr3:1 Gridと銅板を併用したCR胸部病室撮影について、撮影管電圧及び散乱線除去をMisalignmentを含めて検討したので報告します。【使用機器】・CR読取装置:FCR3500(FUJI FILM社製)・IP板:CR CASSETTE ST-VN(FUJI FILM社製)・Phantom:胸部ファントム(京都化学社製)・Grid:MS Xレイグリッドr3,r5,r6,r8(N40,fo 100)・自作成フィルター:銅(0.1mm)+アルミニウム(1.0mm)の合板・ポータブル装置:Sirius 80N(HITACHI社製)・蛍光量計:MODEL F-11(ALCO社製)・電離箱:MODEL 9015,6.0cc指頭型電離箱(Radcal杜製)【方法】(1)JIS(Z4910)規格におけるグリッド及び銅板の物理的性能評価。(2)管電圧の変化に伴う露出倍数、一次線含有率、及びグリッドと銅板の散乱線除去率の検討。(3)各幾何学的配置の歪(Focusの傾斜、Gridの傾斜、Center off、foの延長)によるMisalignmentの発生に伴った、グリッド透過線量の検討及び、ファントム画像の比較検討。(4)管電圧の変化に伴う画質の比較、及び被曝線量の検討。【結果】(1)Cu単体の一次線透過率はr5と同程度であった。(2)r3+Cuの露出倍数は低管電圧でr8、高管電圧でr6と同程度となった。一次線含有量はr5、一次線透過率はr8と同程度であった。(3)幾何学的配置については、foの延長、管球の傾斜、及びグリッドの傾斜による組み合わせで、左右の濃度差が最大となった。(4)r3+Cuの表面入射線量はr5〜r6と同程度であった。また、管電圧の上昇に伴い、表面入射線量の減弱率が他のものに比べ著明であった。【考察】Misalignmentの要因となる条件は、一般的に起こし易い。またその条件の組み合わせにより、発生状態は異なる。r3 GridはFocusの角度、及びfoの設定を正確に行なう事により、Misalignmentの出現はほとんど問題にならないが、被写体厚が厚く、管電圧が90kVを超える場合、散乱線除去率が低下し、CR画像の劣化が著明となる。しかし銅板による散乱線除去を利用する事により、r3の準高圧撮影領域に対する問題点は除去され、総合的に胸部病室撮影の画質向上に有用性が高いと考えられた。[table][table][table][table]

著者関連情報
© 2002 公益社団法人日本放射線技術学会
前の記事 次の記事
feedback
Top