英文欄に記載した四種の中 Mysella paula (A. ADAMS) は鈴木, 高井兩學士に依る千葉縣多古町附近の洪積層からの報告があり, Nassarius gemmulatus (LAMARCK) は神奈川縣長井町大木根から鈴木學士に依つて報告されてゐるが, 他の二種Mactra dolabrata REEVE及びSearlesia simosensis n. sp. は未だ關東地方の洪積層から知られてゐなかつた。
Searlesia simosensisはS. fuscolabiata (SMITH) に比べて螺層はあまり脹れず, 殻口は狭い。S. hokkaidonis (PILSBRY) に似てゐるが殻は該種の様に細長くなく, 螺塔は低い。S. japonica YOKOYAMAは本種より殻が頑丈で, 螺状彫刻が一層顯著である。
S. simosensisを除いた他の三種は何れも現生種で, 特にN. gemmulatus (LAMARCK) の分布は廣く珍らしいものではないが, 關東地方の洪積層の化石では稀な方である。