日本古生物学會報告・紀事
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2. 日本産Serripes
大塚 彌之助
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1935 年 1935 巻 1 号 p. 5-8

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抄録

日本産Serripes屬は全體で7種知られてゐる。即ち
(1)Serripes groenlandicys(BRCGUIÈRE)(北海道, 北極洋, クェベツク)
(2)Serripes laperousii (DESHAYES)(北部日本, ベーリング海峡, アラスカ)
(3)Serripes notabilis SOWERBY (日本海現生, 新潟縣鮮新統)
(4) Serripes pauperculus (YOKOYAMA)(島根縣中新統)
(5) Serripes fujinensis (YOKOYAMA)(島根縣中新統)
(6)Serripes yokoyamai OTUKA (福島縣中新統)
(7) Serripes sp. of KURODA (信濃中部第三系)
上記の内 (1),(2),(3) は現生種で, 何れも化石としても報ぜられてゐる。(4),(5),(6)(7) は第三紀の化石としてのみ知られてゐる。(6) は新種で,(7) は稍々不完全な標本である。(4),(5), は横山博士の記載にかゝるもので, それらはCardium屬及びMactra屬として報ぜられてゐる。(7) は黒田徳米氏の報ぜられたもので, 新種の疑がある。(6) は最近須貝貫二氏が福島懸耶摩郡山ノ郷村荻野に露出する灰色凝灰質砂岩 (通稱緑色凝灰岩と稱してゐるが眞の意味の緑色凝灰岩ではない) から採集されたもので, 之は新種の様に見える。この新種は吹の様なものである。
Serripes yokoyamai OTUKA (新種) 標本は一左殻片と數個の不完全な殻片とである。
殼は大きく, 膨り, 圓き三角形を呈し, 不等側, 前端圓く, 後端は縦に裁られてゐる。腹縁は廣く圓く彎曲してゐる。殻の表面は, 殻質の保存されてゐるところは, 多くの鈍い放射状の肋を有し之は殻の表面の前部では明であるが, 中央部又は後部では不明瞭である。殻頂は稍々膨らみ前方へ向つて彎曲し, 背縁の中央部に位してゐる。第1標本高さ70mm, 長さ77mm, 厚さ (一殻片) 23mm, 第二標本高さ64mm, 長さ71mm, 厚さ (一殻片) 18・5mm.
Serripes yokoyamai OTUKAは Serripes notabilis SOWERBY とその外型極めて類似するが, 前者の殼頂は背縁部の中央に位するのに, 後者のものは前方に偏し, 背縁の3分の1前方にある。

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