日本古生物学會報告・紀事 新編
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745. 四国の上部白亜系和泉層群から産出したオウムガイ類化石 (新種)
古市 光信
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1982 年 1982 巻 126 号 p. 334-340_1

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抄録

香川県に分布する上部白亜系和泉層群の中通頁岩層からオウムガイ類化石が産出した。これをEutrophocerasの新種として記載した。貝殻は密巻きでへそが小さく亜球状である。縫合線はゆるい曲線で腹部に広い鞍部と側面に浅くて広い総部, へそ壁にあまり目立たない小さな鞍部をもっている。類似の縫合線を持つ種として, 白亜紀後期のE. kobayashii, E. kummeli, E. meriteni, E. montomollini, E. neubergicumと和泉山脈から報告されたE. sp., 第三紀初期のE. bryani, E. cookanum, E. japonicum, E. oregonenseがある。これらのうち白亜紀後期のE. neubergicum(これ自身に少し問題あり)と第三紀初期のE. cookanumが隔壁の形状においてよく類似している。なお螺環があまり膨れておらず縫合線が軽微ながら波曲することはNautilusの性状への前兆を暗示しているように思う。産出層の地質時代はBaculites subanceps pacificusを伴うこととそれが本地域の西方でMetaplacenticeras subtilistriatumの産出層準の上位より産出することから上部カンパニアンに対比される。

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