抄録
近年,FAやBA(ビルディングオートメーション)の分野において,多数の制御ノードをオープン規格のネットワークで相互接続した分散制御システム(DCS)が導入され始めている.制御ノード数の多いDCSでは,ネットワーク上での通信トラフィックの集中による制御性能の低下が起こりやすい.ゆえに,通信遅れやパケット損失の制御性能への影響を高精度に予測したいという要求が高まっており,そのためには,DCSシミュレーションにおいて,全事象を論理上並列に連鎖させるメカニズムが必要となる.
しかし,既報のDCSシミュレーションモデルでは,並列離散事象シミュレーション機構が組み込まれていなかった.また,通信プロトコルモデルも組み込まれていなかったので,任意時刻におけるネットワーク上の通信状況を高精度に予測する事も不可能であった.ゆえに,上記の要求を満たす連鎖メカニズムをモデルへ組み込む必要がある.
そこで本研究では,並列離散事象シミュレーションの一手法であるタイムワープ機構を,既報のDCSシミュレーションモデルにおける各モデルへ組み込み,かつ,LonWorksネットワーク用のLonTalkプロトコルモデルを各デバイスモデルへ組み込む事により,ネットワーク上の通信状況を高精度に予測できるようにする事を目的とする.