抄録
車いす利用者の中には,車いす上での座位姿勢の問題として,骨盤の前方滑りを起す事で,転落のリスクに繋がるケースが少なくない。医療スタッフの中には,座位自体を介助で,治す場面を見かけることがある。しかし,我々専門職は,身体機能面と車いす構造上の問題点から,骨盤の前方滑りが起こる理由を考え,対策を抗じなければならない。今回,脳梗塞による右片麻痺を呈し,車いす座位に見守りが必要な症例を担当させて頂いた。この症例は,骨盤の前方滑りにより,車いすからの転落のリスクがある症例であった。症例に対して,脳梗塞の二次的障害として,廃用症候群を予防していくためにも,車いすを利用し,離床時間を促していく必要があった。そのため,骨盤の前方滑りによる車いすからの転落のリスクを軽減する必要があり,指標椅子座位姿勢に基づいたシーティングを施行した。シーティング前後で効果を測定するものとして,日本シーティングコンサルタント協会が開発した「ズレ度JSC版」を使用した。シーティング後,骨盤の前方滑りの改善が,離床時間が65分間から120分間へ増加し,病棟でのスタッフや他患との交流の増加へと繋がり,ADL動作の介助量軽減やQOLの改善へと繋がった。