理学療法 - 臨床・研究・教育
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最新号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
巻頭言
講 座
  • 金子 文成
    2025 年 32 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    近年,情報通信技術(ICT)の発展により,リハビリテーション医療は大きな変革を迎えている。我が国の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」では,統合型ヘルスケアシステムの構築が示され,医療デジタルツインの実現が掲げられている。医療デジタルツインとは,現実世界の情報をデジタル化し,仮想空間上に再現するモデルであり,シミュレーションを通じて社会へ還元することを目的としている。この流れの中で,デジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に発展し,リハビリテーション医療にもAI,VR/XR,ロボティクス,遠隔リハビリテーションといった技術が導入されつつある。我々は,2020年にアカデミア発のベンチャー企業を創業し,リハビリテーション医療DXに取り組んでいる。本稿ではリハビリテーションDXと今後の展望について述べる。

  • 三上 健太, 甲賀 真理, 北山 達郎, 井澤 克也
    2025 年 32 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    心臓リハビリテーション(心リハ)は,急性期(PhaseI),回復期(PhaseII),維持期(PhaseIII)に分類される。急性期は早期離床や合併症予防に,回復期は不安定期の心不全管理や運動耐容能の最大限の回復に尽力する医療者が存在する。一方で維持期において,心疾患を患った方が住み慣れた地域で,心疾患を再発することなく自分らしい生活を最期まで続けることに尽力する医療者も存在する。これまで「医学的評価・運動処方に基づく運動療法」が重視されてきた心リハであるが,近年では医療から介護,そして地域へと広がり,新たな時代を迎えている。心リハ指導士,心不全療養指導士や認定理学療法士などの専門資格を持つ理学療法士の活躍の場は広がり続けている。今後は,地域特性に合わせて,地域を巻き込んだ心リハ体制の構築が望まれる。

研究論文
  • 三浦 寛貴, 山崎 裕子, 益子 千慧, 村上 小夏, 浅見 和哉, 今村 嘉希, 藤澤 政紀
    2025 年 32 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】バックレストの有無が姿勢や嚥下機能に及ぼす影響を検討した。【方法】対象は摂食嚥下障害を有する脳血管疾患患者 12 名であった。身体機能計測として頸部・頭頸部・体幹の屈曲筋力,頭蓋脊椎角(Craniovertebral Angle:CVA)を,嚥下機能検査としてRepetitive Saliva Swallowing Test(RSST),舌圧を測定した。CVA,RSST,舌圧はバックレストなし(NB),バックレストあり(WB)の2条件で計測を行った。【結果】NBとWBで比較し,CVAと舌圧はWBにおいて有意に高値であった。WBにおいてRSSTと舌圧が共に高い値であった改善群と,それ以外の非改善群の身体機能を比較したところ,改善群は体幹屈曲筋力が有意に高かった。【結論】バックレストにはCVAと舌圧を高める効果があった。バックレストにより嚥下機能が高値を示した者は体幹筋力が強いという特性を認めた。しかし筋力低下が著しい症例にもシーティングの有効性があることから,嚥下障害の重症度によってシーティングの役割は異なると考えられる。

  • 石崎 裕佳, 萬井 太規, 平田 恵介
    2025 年 32 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】小児の歩行開始の予測的姿勢調節において,障害物またぎの有無による影響を成人と比較し傾向を予備的に検討することを目的とした。【方法】定型発達児と健常若年成人に対し,通常の歩行開始と障害物をまたぎ歩行開始する2条件を行い年齢と条件で比較,検討した。【結果】歩行開始にまたぎ動作を伴う場合,小児は成人と同様に左右方向の空間変数に拡大を認めた(p=0.008-0.01)。一方,前後方向の空間変数は成人と異なり有意差を認めず時間変数は成人,小児ともに有意差を認めなかった(p=0.14-0.74)。【結論】通常の歩行開始と障害物またぎ時の歩行開始において,小児の予測的姿勢調節は成人と同様の戦略(左右方向の空間変数)と異なる戦略(前後方向の空間変数と時間変数)が混在する傾向を示した。ただし,本研究の被験者数と発達過程を考慮すると結論は限定的で各年齢帯で十分な人数を確保した検証が必要である。

  • 渡辺 恒希, 榎本 大地, 岡 和博, 大熊 克信
    2025 年 32 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,人工股関節全置換術(total hip arthroplasty;以下,THA)術後以降の日本整形外科学会股関節機能判定基準(Japanese orthopaedic association hip score;以下,JOA)および日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(Japanese Orthopaedic Association Hip Disease Evaluation Questionnaire;以下,JHEQ)の経時的な変化を明らかにすることである。【方法】当院でTHAを施行した66名を対象に,退院時,術後1年,術後3年,術後5年でJOAおよびJHEQを評価し,群間比較を行った。【結果】両評価ともに,退院時と術後1年,退院時と術後3年,退院時と術後5年の間で有意差が認められたが,術後1年以降の群間に有意差はみられなかった。【結論】退院時から術後1年までは改善傾向を示し,それ以降や術後5年においても運動機能やQOLは維持された。JOAおよびJHEQにて術後の経過を追い,適切な時期に運動指導や患者教育を行うことで,関節機能の低下やQOLの低下を予防できる可能性がある。

  • 上島 在泰, 丸木 秀行, 山崎 雄一郎, 佐藤 博文, 大熊 克信, 小林 陽平, 高石 真二郎
    2025 年 32 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】運動失調を伴うテント下脳卒中患者の機能改善に認知機能障害の有無が影響するかを検討した。【方法】認知機能正常群20名と低下群37名の2群に分けた。基本情報の比較は対応のないt検定,χ 2検定を実施した。各機能の比較は,反復測定二元配置分散分析を実施した。交互作用が有意であった項目は,事後検定として対応のあるt検定を実施した。【結果】基本情報は,入院時Mini-Mental State Examination JapaneseとTrunk Control Test以外に有意差を認めず,反復測定二元配置分散分析の結果,正常群はTCT以外に期間における主効果が観察された。低下群は,全てに期間における主効果が観察された。交互作用はTCTのみ認めた。【結論】運動失調を伴うテント下脳卒中患者は,運動機能や生活機能が認知機能障害の有無に関わらず,改善することが明らかとなった。

  • 渡邉 将史, 清野 健人, 勝又 信一, 小島 達自, 藤﨑 和希
    2025 年 32 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    【はじめに】本研究では,変形性膝関節症患者の人工膝関節全置換術(TKA)後膝関節屈曲可動域と膝蓋骨高や膝蓋腱厚との関連性を検討した。【対象および方法】2021年7月から2023年11月にTKAを施行した42 名50 膝を対象とした。測定項目は,膝関節屈曲可動域,膝蓋骨高(BP),膝蓋腱厚とした。術後膝関節屈曲可動域と術前後膝蓋骨高,膝蓋腱厚との関連性をSpearmanの順位相関係数にて検討した。【結果】最終的な解析対象は20名23膝となった。術後膝関節屈曲可動域と膝蓋骨高,膝蓋腱厚に有意な相関を認めなかった。【結論】TKA後膝関節屈曲可動域と膝蓋骨高,膝蓋腱厚に有意な相関を認めなかった。今後サンプルサイズを増大し,膝蓋骨高や膝蓋腱厚以外の因子による術後膝関節屈曲可動域との関連性も考慮し,再検証する必要がある。

  • ―介護予防教室の参加者の半年間の変化―
    森田 新平, 武井 圭一, 稲生 実枝, 谷 直明
    2025 年 32 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】COVID-19禍における身体的フレイル,社会的フレイル,身体機能と活動に着目して,6か月間の変化を予備的に調査することを目的とした。【方法】地域在住高齢者16名を対象に,身体的フレイルとしてJ-CHS,社会的フレイルとしてNCGG-SGS社会的フレイル診断基準,身体機能としてSPPB,活動の評価としてLSAを調査し比較した。【結果】身体的フレイルは,「疲労感」が0%から31.3%に増加し,プレフレイルが増加した。社会的フレイルは,「友人の家を訪ねていない」が37.5%から56.3%に増加した。活動はLSA下位項目の頻度において,生活空間レベルが市内・市外の減少は31.3%であり,自宅近隣と比較して高値となった。【結論】身体的フレイルでは「疲労感」,社会的フレイルでは「友人の家を訪ねていない」ことが感受性の高い指標であった。また,市内・市外での活動に対する支援の必要性も示唆された。

  • 小栢 進也, 堀内 健太, 島村 雅彦
    2025 年 32 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】膝関節の剪断ストレスは変形性膝関節症の発生の原因とされる。しかし,剪断運動を生み出す膝回旋運動が疼痛を発生させるかわかっていない。そこで本研究では歩行中の膝回旋運動と疼痛発生の関係性を縦断的に調査した。【方法】対象は膝の痛みがない65歳以上の高齢者とした。直線歩行と曲線歩行における立脚期の膝関節角度をポイントクラスター法にて算出し,立脚期における関節角度と可動範囲を算出した。さらに1年間後に疼痛発生を調べ,関節角度の関係性をロジスティック回帰分析により検証した。【結果】追跡が可能であった21名の高齢者のうち,6名で疼痛が発生した。直線および曲線歩行の内旋・外旋角度,回旋可動範囲はすべて疼痛と有意な関係性を示さなかった。一方,直線歩行の膝外反角度に有意な関係性が認められた(オッズ比0.68)。【結論】膝回旋運動が疼痛発生に関与する可能性を示唆する結果は得られなかった。

  • 宮本 清隆, 楠本 泰士, 脇 遼太朗
    2025 年 32 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】家族中心ケア(Family-centered care:FCC)や共同意思決定(Shared decision making:SDM)の臨床への定着に向け,クリニカルラダー(以下,ラダー)と理学療法スキルチェックシート(以下,スキルシート)を新入職員教育に導入した。その活用状況と課題について報告する。【方法】SDMに精通した理学療法士がラダーとスキルシートを作成し,新入職員2名(A,B)の臨床教育へ導入した。それらの有用性と課題についてアンケートと半構造化面接で調査し,面接内容を質的記述的分析法で分析した。【結果】AはBに比べ全ての項目で高かった。A,Bともラダーによる成長の実感とスキルシートのチェック基準の理解度が低かった。質的分析からラダーのチェック基準の分かりづらさ,精神的負担感が抽出された。【結論】ラダーとスキルシートによる一定の効果がみられたが内容の理解や判定法に課題があった。今後もより教育効果が高まるように調整し,運用していく必要がある。

調査報告
  • 阿部 昭大, 横山 茂樹, 佐藤 三矢, 齋藤 圭介, 藤崎 和希
    2025 年 32 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/27
    ジャーナル フリー

    【目的】男子高校サッカー選手における慢性足関節不安定症(Chronic Ankle Instability,以下,CAI)の有病率と傷害脚を調査すること。【方法】調査期間は2021年12月から2022年3月で,対象は群馬県の高校サッカー部員67名でCAIの有病率を調査した。【結果】CAIと判断された者は34名で全体の50.7%,その中で両脚CAIと判断された者は17名,片脚CAIと判断された者は17名とそれぞれ50.0%であった。片脚CAIと判断された者のうち,利き脚のCAIは13名で76.5%,非利き脚のCAIが4名で23.5%であった。【結論】CAIは高校サッカー選手においても有病率の高い傷害であり,特に片脚CAIでは利き脚に多いという特性が示唆された。多くの高校サッカー選手がCAIへ移行していることを認知せず,足関節捻挫を繰り返している可能性があることが考えられた。

2023年度研究助成報告書
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