2024 年 3 巻 1 号 p. 50-58
【緒言】糖尿病特有の合併症に足病変が挙げられる.足病変を呈す要因の一つに足底圧の上昇が報告されており,歩行中の足底圧を軽減させることが足病変予防として重要である.また,歩行による血糖コントロールへの効果ではエネルギー消費量が多いほうが良い.しかし,エネルギー消費量と足底圧を同時に測定した研究は少なく,両条件を満たした歩行を明らかにすることが課題となっている.本研究の目的は,快適歩行時の歩幅を基準として,速度を一定に保ち歩幅を変化させた際のエネルギー消費量と足底圧の関係性を明らかにすることである. 【方法】若年健常者14名を対象に一定の歩行速度において,歩幅を変化させた際の酸素摂取量と足底圧の変化を測定した.エネルギー消費量の指標として酸素摂取量を,足底圧の測定にはインソール型足底圧測定機器を用い,母趾,母趾球,踵の3部位を測定した.対象は健常者とし,トレッドミル上にて実施した.条件は快適歩行時の歩幅を基準(0%)に歩幅を−20%,−10%,10%,20%と変化させた5条件とし,条件間の比較にFriedman検定を用いた. 【結果】歩幅0%に対して歩幅20%とすることで有意に酸素摂取量の増加を認めた.足底圧は,踵のみ歩幅0%に対して歩幅−10%で足底圧が有意に減少した. 【結論】歩幅を変化させることはエネルギー消費量を増加させることが明らかになった.さらに歩幅を10%減らすことで踵の足底圧は減少することが示唆された.