関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 108
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ウォーキングが運動能力に与える効果
*中原 大輔吉田 真一中島 新一増渕 喜秋池田 麻里子
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抄録

【目的】運動習慣を有すことで、身体機能・能力の維持・改善を期待することが出来る。当院リハビリテーション科で行っている運動教室参加者の中では、ウォーキングを行う習慣がある方が最も多かった。今回はウォーキングが運動能力にどのような効果をもたらしているのかを検証した。
【方法】平成17年5月13日~平成18年2月17日までの男性の参加者を対象とし、質問紙法で事前アンケートにおいて運動習慣の有無を確認。ウォーキングを行っている:A群41名(56.7±7.7歳)、その他の内容(ゴルフ、舞踊等)を行っている:B群40名(53.3±10.0歳)、運動習慣が無い:C群77名(52.7±8.2歳)の3群に区分した。評価測定項目は、10m歩行速度、右膝伸展筋力(WBI)、最大酸素摂取能力(MOU)を用い、C群に対しA群・B群をそれぞれ比較検討した。統計処理としてそれぞれWelchのt検定を行い、いずれも5%未満を有意とした。
【結果】10m歩行速度において、A群がC群よりも有意に優れていた(A vs C:p=0.043)。WBIにおいては、A群とC群間、B群とC群間に有意差は認められなかった(A vs C:p=0.368、B vs C:p=0.972)。 MOUにおいては、A群がC群よりも優れる傾向があった(A vs C:p=0.056、B vs C:p=0.167)。
【考察】ウォーキングを行っている群は、歩行速度が有意に優れていた。歩くことで全身的な協調性や運動戦略などが整えられている可能性が示唆される。しかし、MOU・WBIでは有意差が認められなかった。ウォーキングは有酸素運動であり、代謝を高めることで生活習慣病の予防に有効といわれている。MOUにおいて有意差が現れなかった原因として、ウォーキングを行っている時間、負荷等、被験者間で内容が異なっていたことが考えられる。WBIの結果から、ウォーキングは筋力強化に有効でないと考えられる。ウォーキングは手軽に行えるため一般に勧めやすいが、口頭での簡単な指示だけではなく、ウォーキング自体の内容、他の運動と組み合わせて指導することが重要である。運動習慣の有無が全ての機能を左右するのではなく、その内容が重要であると考察する。
【まとめ】ウォーキングを行う習慣は歩行速度の上昇には有効だが、筋力・最大酸素摂取能力の向上は認められなかった。ウォーキング自体の質の指導、他の運動を組合せることが重要である。

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© 2006 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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