関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 109
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急性リンパ性白血病の緩解導入療法時の理学療法
―薬物療法による副作用を呈した一症例―
*高橋 洋介高橋 文久西潟 美砂小関 美保子
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抄録

【はじめに】急性白血病患者において造血幹細胞移植(以下移植)前の寛解導入療法時に全身機能(筋力や持久力、心肺機能)を維持することは重要である。我が国ではこの時期における理学療法(以下PT)の報告は少ない。
 今回急性リンパ性白血病の寛解導入療法時に横紋筋融解症を伴う急性ステロイドミオパチー(以下急性SM)や抗癌剤による正常造血細胞の低下を来たし、さらに胸腰椎椎間板炎や深部静脈血栓症(以下DVT)の発症によりベッド上臥床となった症例を担当した。副作用による合併症に注意した関わりとPTの効果を検討したため報告する。
【症例】年齢30歳、男性、身長175cm、体重114 kg、BMI37.3、入院前ADLは全自立。
【経過】2005年6月1日急性リンパ性白血病と診断され当院入院し、寛解導入療法開始。同月3日人工呼吸器装着。CPK10470IU/lと高値となり横紋筋融解症を伴う急性SMと診断。同月14日PT開始。同月16日人工呼吸器離脱。同年8月10日胸腰椎椎間板炎によりベッド上安静となる。同年11月28日DVT発症によりPT中止。2006年1月4日PT再開。同年2月時点で加療中。
【PT初期評価】意識清明、精神機能正常、MMT四肢1、ADL全介助。Barthel index0点。
【PTの関わり】ステロイド投与時は横紋筋融解症の指標となるCPK値が正常値となってから筋力強化を開始した。その際Borg scaleを用いて自覚的運動強度を確認し、過度な負荷を与えないようにした。また抗癌剤による血球数の変化に応じ運動内容を変更し、CRP値、消化器症状も確認した。また定期的に筋力評価と評価結果に応じた動作指導を行いADLの拡大につなげた。
【結果】2006年2月10日、MMT両上肢4、両下肢3-4。ADLは着替えや整容などの身辺動作や車椅子駆動は自立。Barthel index50点とPT介入による合併症は起こさずに筋力の向上が得られ、動作・ADLが向上した。
【考察】寛解導入療法時にPTが介入する目的は移植に備え全身機能の維持・向上を図り、移植後全身機能の低下を最小限に抑え、早期にADLを獲得することである。しかし化学療法により正常造血細胞は著明に低下しPTが介入する際の感染や出血などのリスクは大きい。今回化学療法による副作用に注意しながら進めたことで合併症を予防できた。
 またSMに対して運動過負荷は筋線維の破壊につながり、運動量の低下はステロイドの感受性を高め、筋萎縮を助長するとの報告がある。今回は筋力の向上が得られたこと、筋力に応じた動作指導を行い、ADLの拡大が得られたことがPTの効果と考えた。

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© 2006 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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