関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 79
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末梢神経縮小術を実施された片麻痺症例の経過報告
*深谷 大輔石川 公久清水 朋枝江口 清鮎澤 聡
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キーワード: 末梢神経縮小術, 痙縮, 歩行
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抄録

【はじめに】重度な痙縮は歩行やADLに著しい影響を及ぼし、理学療法の実施においても大きな阻害要因となることはしばしば経験することである。そのような痙縮に対し、2005年度より当院において機能的脳神経外科的手術である末梢神経縮小術が実施されるようになった。今回、術後5ヶ月間Follow upすることができた1症例の経過について報告する。なお、測定データの使用にあたっては本人および執刀医より口頭にて承諾を得た。
【症例紹介】48歳男性。2000年7月3日左被殻出血発症。2005年9月6日右内反尖足に対し脛骨神経縮小術実施。
【術前】Brunnstrom stage上肢2・手指2・下肢3。金属支柱付SLBとT字杖を使用し歩行自立。装具なしでの歩行は不可能。裸足立位・歩行で著明な内反尖足を認める。右下腿三頭筋のModified Ashworth Scale(MAS)3。10m最大歩行速度(MWS)33.3m/min。Physiolosical Cost Index(PCI)1.5beats/m。
【術後】退院時(術後10日);装具なし、T字杖のみでの歩行が可能となる。裸足歩行時の内反が著減。MAS2。MWS40.0m/min。PCI1.5beats/m。自覚的にも「歩きやすい」と満足感が得られた。
術後1ヶ月;日常生活ではORTOPとT字杖にて歩行自立。MAS2。MWS60.0m/min。Cadence145steps/min。PCI0.8beats/m。
術後2ヶ月;MAS2。MWS54.5m/min。Cadence136steps/min。PCI0.5beats/m。
術後3ヶ月;MAS1。MWS60.0m/min。Cadence144steps/min。PCI0.9beats/m。
術後4ヶ月;MAS0。MWS60.0m/min。Cadence138steps/min。PCI0.8beats/m。
術後5ヶ月;MAS0。MWS66.7m/min。Cadence140steps/min。PCI0.8beats/m。
【まとめ】MASの変化から、本手術によって著明な痙縮の減弱が得られたことが分かり、歩行に関する各パラメータより、歩行機能の向上が認められた。また、装具なしでの歩行も可能となったことから、日常生活における利便性も向上したものと推察される。さらに、術後に「腕が軽くなった」といった感想も得られ、他の身体部位にも若干の痙縮の減弱が認められた。末梢神経縮小術は理学療法のみでは改善困難な痙縮に対する相互補完的な治療法であると考えられ、理学療法においてはこれまで痙縮によってマスクされていた随意運動の促通などを模索していくことが今後の課題である。

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© 2006 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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