関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 81
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リーチ動作における腹横筋収縮の機能評価
リアルタイム超音波画像より
*渡辺 昌宏伊坂 重人佐藤 れい子今村 安秀(MD)
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抄録

【はじめに】腰痛患者の多くは腹横筋の収縮が遅延しているといわれており,海外に於て超音波画像を使用し視覚からのフィードバックによる腹横筋の収縮教育が治療で実際に行なわれている.今回我々は,リーチ動作においてリーチ距離と重錘負荷の2種類の条件を与えたときの成人男性の腹横筋の収縮時期について,リアルタイム超音波画像を使用し検討した.
【方法】対象は既往歴のない健常成人男性10名(年齢:27.2±4.7歳 身長:174.1±5.9cm 体重:66.3±7.5kg. BMI:21.9±2.2 上肢長:74.7±4.0)としインフォームドコンセントを得て実施した.被検者の開始肢位は端坐位とし利き腕を肩関節軽度内旋位,肘関節90度屈曲位,体幹正中線の位置でテーブル上に置いた.動作課題は両大転子を結んだ中心線から体幹の回旋は行なわず30cm,40cm,50cm,60cm,70cmそれぞれのリーチ位置で,5種類の重錘負荷(0kg,0.25kg,0.5kg,0.75kg,1.0kg)を与え,テーブル上から重錘挙上5cmを任意のスピードで行うこととした.各条件下でのリーチ動作試行は2回毎とし,2回目の動作で超音波診断装置(アロカ社製 SSD-5500)を用い,左腸骨稜上部に位置させた深触子(7.5-10MHzリニア型)にて腹横筋の収縮を横筋筋膜の動きおよび筋圧変化によって確認した.
【結果】重錘負荷とリーチ距離,腹横筋に収縮が認められた被検者数(人数)は以下の如くであった.0kg,0.25kg:30cm~70cm(0).0.5kg:30cmおよび40cm(0),50cm(4),60cm(3),70cm(7).0.75kg:30cm(0),40cm(1),50cm(6),60cm(8),70cm(10).1.0kg:30cm(2),40cm(3),50cm(8),60cm(8),70cm(10).
【考察】健常成人男性10名において,超音波画像での腹横筋収縮が全員に認められたのは0.75kgと1.0kgでの70cmリーチ動作時であった.つまり重錘負荷が大きくなり,リーチ距離が伸びるほど健常成人において腹横筋の収縮は必要になることが示唆された.また,今回のリーチ距離70cmは身長174cmの日本人成人男性の平均上肢長と同程度であり,体幹正中位での最大リーチとも考えられる.それに比し,0kgや0.25kgなど上肢の重さ程度であれば腹横筋の収縮は必要ないことが考えられた.今後,椎体と椎体の安定性に大きく関与している腹横筋について,収縮しやすいリーチ動作を検討し治療および自己管理へ応用していくため,多様な年齢層のデータ集積の必要性があると考える

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© 2006 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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