関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 82
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小児期より脚長差があった脳梗塞・右片麻痺を呈した一症例
*飯塚 茜高尾 敏文高橋 真希子宮崎 仁斉藤 秀之土屋 滋伊佐地 隆小関 迪
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キーワード: 脚長差, 補高, 脳血管障害
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抄録

【はじめに】小児期より脚長差があった右片麻痺を呈した症例に対し、立位の獲得・歩行能力の向上を目指し補高やSHBを用いてアプローチした結果、病前の行動様式を考慮したアプローチが重要であることを実感したので、考察を加え報告する。
【症例】左中大脳動脈領域の脳梗塞により、右片麻痺、全失語を呈した70歳男性。現病歴は2005年12月28日朝起きてから一言もしゃべらず、声をかけても指示に従うことがなかったため救急車で当院に来院、入院となった。既往で小児期に骨髄炎に対し右大腿部の手術を施行(詳細不明)し、この時より脚長差を認めた。病前ADLは全て自立、移動は独歩であった。
【初期評価(2005年12月29日)】JCSI-3、全失語のため理解・表出ともに困難、状況判断により簡単な指示には理解を示した。動作より右半側空間無視、身体失認、構成障害が疑われた。Br.Stageは右上肢II、下肢III。関節可動域は右膝伸展-30°、右足背屈-10°で、下肢長は棘果長で15cm、転子果長で18cm脚長差があり右下肢が短縮していた。起居動作は監視レベルであった。
【経過】第2病日目よりベッドサイドでの関節可動域練習、起居・起立動作練習を開始した。立位保持は上肢での支持があれば監視で可能だったが、右足底は床に接地していなかった。第10病日目足底の接地面積の拡大を図り右下肢荷重量を増大させるため、片手すりと右靴底に3~6cmの補高を行い立位・歩行練習を実施した。立位では足底の接地面積は拡大し安定したが、歩行では前足部外側の接地となり右下肢支持性が低下し、最大介助レベルであった。次にSHBを装着し歩行したところ、前足部全体での荷重となり中等度介助レベルとなった。第16病日目回復期リハビリテーション病棟へ転棟となった。
【考察】脚長差に対する装具による補正の絶対的適応は3cmまでとされ、8cm以上の短縮では手術の適応となり、装具による補高は一応可能であるが、立脚相での安定性などから考えても実際的ではないといわれている。本症例は、立位では補高によって安定性の向上を認めた。足底の接地面積が拡大し、右下肢での荷重が可能となったためだと考えられ、補高が有効であったと考えられた。しかし歩行では右立脚相で前外足部での接地となり右下肢の支持性が低下した。これは小児期より60年あまり脚長差がある状態で歩行していたため、右足関節の背屈制限がおこり足底の接地面が前足部となり、さらに痙性による内反尖足が強まったため前外足部での接地となり荷重面積が減少したと考えられた。病前の行動様式を考慮したアプローチが重要であることを実感した。

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© 2006 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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