関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第26回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 13
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骨・関節系
超音波画像診断装置を用いた腹横筋の安静時と最大活動時での筋厚変化
*出間 順子大羽 明美大江 厚川澄 蘭百瀬 公人
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抄録

【目的】 腰痛患者の治療の一つに腹横筋の機能改善のエクササイズがある。近年の腹横筋活動に関する研究では非侵襲的な評価方法として超音波画像診断装置が用いられている。一般的に超音波画像診断装置による筋活動の評価は筋厚の変化として捉えるが、どのような運動時に腹横筋が最大活動となり筋厚を増加させるのかは、明らかとなっていない。本研究の目的は、腹横筋(以下TrA)および内腹斜筋(以下IO)について、安静時筋厚と最大活動時筋厚を各種の運動時で計測し、選択的にTrAを活動させる運動を明らかにすることである。
【方法】 対象は健常成人10名(男性5名、女性5名)である。開始肢位を膝立て背臥位とし、安静時、TrAエクササイズ(「下腹部を凹ませる」運動を最大に行う:以下TrAex)、体幹屈曲、体幹回旋の4つの運動をそれぞれ3回ずつ行わせ、超音波画像診断装置にて静止画像を得た。画像上でIOとTrAの筋厚を最も厚い部分の境界線の内側で計測した。安静時のデータは最小値、活動時は最大値を代表値として用いた。TrAとIOの筋厚の変化を3つの運動を従属変数として一元配置分散分析を行い、事後検定としてTukey検定を用いた。本研究は当院倫理委員会にて審査され、承認を得ている。
【結果】 TrAの平均筋厚は安静時2.4±0.7 mm、TrAex時5.7±1.6 mm、体幹屈曲時4.3±1.0 mm、体幹回旋時4.5±1.5 mmであった。IOは安静時6.4±2.1 mm、TrAex時9.0±3.3 mm、体幹屈曲時10.1±3.3 mm、体幹回旋時13.4±4.3 mmであった。一元配置分散分析にて、TrA、IOともに運動による差が有意に認められた(p<0.01)。Tukey検定によりTrAでは安静時と他の2つの運動間(p<0.01)に、IOでは安静時と体幹回旋間(p<0.01)、TrAexと体幹回旋間(p<0.05)に有意差が認められた。
【考察】 安静時の筋厚と運動時の筋厚の変化は、どちらもTrAよりもIOが大きかった。つまり同程度の筋活動時にTrAの筋厚変化はIOよりも小さく現れ、異なった筋間では筋収縮活動の大きさを筋厚の絶対値を用いて比較することはできないと考えられる。3つの運動のTrA筋厚は安静時より有意に厚く、また有意差は無かったが3つの運動ではTrAexが最も厚い傾向があった。IOでは体幹回旋時が安静時、TrAexよりも有意に厚かった。以上のことから、「下腹部を凹ませる」TrAexは最もTrAを厚くするがIOを厚くさせにくいと考えられる。しかしながら筋厚の変化は筋活動以外の影響も受けるので、さらに筋厚と筋活動の関係を明らかにする必要があると思われる。
【まとめ】 超音波画像診断装置を用いてTrAとIOについて体幹運動時の筋厚変化を調査し、どの運動がより選択的なTrA活動を促せるかを検討した。結果、超音波画像上では最大活動時にTrAのほうがIOよりも小さな筋厚変化として現れることと、「下腹部を凹ませる」運動がTrAを選択的に収縮させることができることが示唆された。

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© 2007 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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