関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第26回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 14
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骨・関節系
体幹の固定性が股関節筋力と歩行に与える影響
~変形性股関節症患者1例をを通して~
*湖東 聡大橋 夏美根本 伸洋松永 勇紀
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抄録

【はじめに】 近年、Hip-spine syndromeという概念が注目されており、脊椎の機能低下が股関節機能の低下を引き起こすとも言われている。そのような患者に、運動療法で、体幹機能の向上を図ると、股関節機能の向上がみられ、疼痛の軽減、歩行能力の改善にまで至ることを経験する。第33回日本股関節学会にて、健常人において、骨盤帯ベルト装着により体幹の固定性を向上させることで、股関節筋力を増大させる傾向にあると報告した。そこで、今回変形性股関節症患者1例を通して、同様の測定を行ない、骨盤帯ベルト装着により体幹の固定性を向上させることで股関節筋力、さらに歩行能力に与える影響を検討することとした。
【症例紹介】 60歳代、男性。身長164cm、体重73kg。診断名は、右変形性股関節症で、右寛骨臼回転骨切り術(以下RAO)施行した。術後5ヶ月で全荷重を開始し、屋内独歩、屋外片松葉杖歩行である。術後8ヶ月で計測を行なった。本症例は、研究の目的を十分に説明し同意を得た。
【方法】 体幹の固定性として骨盤帯ベルトを使用し、骨盤帯ベルトを巻いた時と巻いていない時の両股関節筋力と歩行能力を測定した。股関節筋力の測定は、日本メディックス社製のMICRO FET2を使用し、股関節屈曲・伸展・内転・外転・内旋・外旋の筋力を測定した。測定値は、3回実施した平均値とした。また、歩行能力は、10m歩行評価を使用し測定を行なった。
【結果】 骨盤帯ベルト装着の有無における股関節筋力測定に関しては、術側である右股関節においては、全ての方向に対して筋力の増大を示した。非術側である左股関節においては、股関節屈曲・伸展・外転・内旋・外旋において筋力の増大を示した。10m歩行評価は、歩行速度59.2m/minから65.1m/minへ、歩行率は、94.1steps/minから101.1steps/minへと変化が見られた。
【考察】 第33回日本股関節学会にて、健常人において、骨盤帯ベルト装着により体幹の固定性を向上させることで、股関節筋力を増大させる傾向にあると報告した。今回、股関節疾患患者においても骨盤帯ベルトを装着することで、健常人と同様に股関節筋力の増大がみられ、さらに歩行能力の向上が見られた。これは、骨盤帯ベルトの装着により腹腔内圧の上昇がみられ、体幹の固定性が増加した為だと考えられる。したがって、股関節疾患患者において股関節筋力が低下している症例に対して、股関節筋力を増大させたり、歩行能力の向上を図るために、骨盤帯ベルトの使用や体幹へアプローチをすることは有用であると考えられる。

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© 2007 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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