抄録
【はじめに】足趾は姿勢制御において重要とされ、特に足把持力は前方への重心移動で体重支持作用があるとの報告がある。しかし足趾が実際にどのように作用しているかについての報告は少ない。そこで今回我々は動的姿勢制御時における足趾の働きについて足底圧分布測定装置を用いて調査、検討したので報告する。
【対象】研究趣旨を説明し同意を得た運動器に障害のない健常成人18名(男性5名、女性13名、平均年齢29.9±7.7歳)を対象とした。
【方法】対象者の身長、体重、足長を計測した。足把持力は竹井機器製握力計を足把持力が計測できるように自主制作し、立位にて足関節中間位、中足趾節関節中間位で測定した。動的姿勢制御下における足底圧分布の測定は、Duncanらの提唱するFunctional reach test(以下FRT)を足関節、足趾の働きが制限されないよう下肢関節の制限を排し、足底圧分布測定装置(Medicapteurs社製Win-pod)の上で足底圧分布を記録しながら行った。対象者の身体評価、足把持力、FRT距離、足底圧分布の結果をPearsonの相関係数を用いて各々の関係について検討し、有意水準は5%未満とした。
【結果】各測定値の平均は足把持力13.88±4.86kg、FRT距離39.41±6.46cm、身長163.95±8.49cm、体重55.42±10.95kg、足長24.66±1.68cm、最大距離時最大圧2976.36±596.32g/cm2であった。足把持力と身長、足長、FRT距離との間に正の相関関係が認められ、その他の項目とは相関は認められなかった。FRT距離と身長との間には正の相関傾向があったが有意水準は満たさなかった。静止立位時の足底圧分布で最大圧、足底圧中心(以下CFP)とも被検者によって一定した傾向は認められなかったが、FRT最大距離時の足底圧分布では全ての被験者の最大圧は第1趾、CFPは第1、第2中足骨間であった。
【考察】足把持力とFRT距離の間に正の相関関係が認められたことにより前方への動的姿勢制御時における足趾の働きは、諸家の報告と同様に体重支持作用があると考えられた。また、全ての被験者においてFRT最大距離時の足底圧分布の最大圧が第1趾、CFPが第1、第2中足骨間であったことからも前方への動的姿勢制御時における前足部ならびに足趾の機能の重要性が示唆された。さらに本研究でのFRTは足趾・足関節の制限を排して測定したことによって、FRT時の動的姿勢制御機能として足関節および足趾の底屈モーメントが大きく関与したものと考えられた。