抄録
【はじめに】
理学療法を行う上で、閉鎖性運動連鎖(以下CKC)を用いてのエクササイズ(以下ex)を行う事が多い。効果としては、筋力増強、筋出力の制御、バランス等の身体機能向上が期待できる。今回、CKC-ex前後にActive Balancerを用いて、視覚的・数値的にデータを集計し、比較・検討を行ったのでここに報告する。
【対象者】
対象者を以下のように分類した。a群は当院通院中の外来患者でFree gait可能、Basal Index100点の8名(平均年齢45歳、男性2名女性6名)、疾患内訳は変形性膝関節症4、前十字靭帯損傷保存2、アキレス腱損傷1、膝蓋骨骨折1であり、b群は健常者9名(平均年齢23歳、男性4名・女性5名)であった。
【方法】
対象者に、自重のみでハーフスクワットを10回、左右ラウンジを各10回のCKC-exを実施し、以下の計測を前後に行った。(1)スタティック計測は、開眼にて左右片脚立位を15秒間保持、(2)アクティブ計測では、踵接地、膝関節伸展位を条件に前後左右8方向への最大ウエイトシフトを実施した。分析には、データを10項目に分け、対応のあるt‐検定を用い危険率5%とした。
【結果】
今回、有意差がみられたのは、10項目中1項目のみ、外来患者スタティック片脚立位左側重心平均X軸であった。その他の計測では有意性がみられなかった。しかし、スタティックな課題においてはa・b群毎に反応している傾向がみられ、アクティブな課題ではa・b群共に過半数が計測時間の短縮がみられた。
【考察】
今回、有意差見られたのは、外来患者スタティック片脚立位左側重心平均X軸のみであったが、理由としてはex前の特徴は外側優位に重心があり、CKC-exを行うことにより、良的なアライメントで荷重をかけることが可能になり、主動作筋・拮抗筋による協調性と運動連鎖が改善、大腿内側筋群の遠心性収縮の向上が得られ、内側部に重心がシフトされたことが考えられる。
しかし、他の計測で傾向はみられたものの、有意差が認められなかった理由としては、測定条件は一定条件だが、個人データのばらつき、1回のみの計測実施だったことや、個々に応じた運動回数・運動負荷が未設定だったこと、計測条件の難易度、疲労の問題等が考えられる。今後、さらに対象、運動負荷、測定回数、環境条件等を考慮し、CKC-exの有用性を追求したいと考える。