関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第27回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 36
会議情報

理学療法基礎/神経系
支持基底面の減少が上肢探索機能に及ぼす影響
―ダイナミック・タッチの精度に着目して―
*川口 隼徳田 良英
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】ものや道具を介在した所作は、単に上肢機能のみならず、姿勢の安定保持が重要な役割を果たし、身体全体が協調して動くように作用する。一般に姿勢は支持基底面が広いほど安定し、重力をはじめ周辺の環境から絶えず情報を得てアップデートしながら保持していると考えられている。本研究は、ものを介在しての環境からの情報探索(以下、ダイナミック・タッチ)の精度が支持基底面の差異に影響されるか否かを明らかにすることを目的とする。
【方法】健常者によるモデル実験を行った。被験者は、健常な大学生男女、計32名(男性20名、女性12名、平均21.9±0.7歳)とした。実験方法は、まず被験者に10 cmの長さを視覚的に確認させた。次に上肢のダイナミック・タッチの精度に着目するため、アイマスクを装着し視覚情報を除去した状態にした。本研究で行ったダイナミック・タッチの課題は、利き手で筒状のものを介して箱を10 cm押す試行を考案して行った。箱は接触抵抗を得られるように3 kgの重錘を入れ、箱が直線的に移動し蛇行しないように箱をレール上に置いた。測定条件は、1)両側殿部・足底を支持基底面とした座位(支持基底面が広い状況)、2)利き手側の片側殿部・足底を支持基底面とした座位(支持基底面が狭い状況)とした。試行Aは、支持基底面が広い条件1)を行い、次いで再び同じ設定の条件1)の順で行うものとした。試行Bは、まず支持基底面が広い条件1)を行い、次いで支持基底面が狭い条件2)の順で行うものとした。試行A、試行Bそれぞれで移動距離(cm)の差を実測し、試行A、試行Bの両者を比較した。統計学的解析は、試行A、試行Bそれぞれの差の平均値を算出しデータの正規性を確認の上、StudentのT検定で有意水準5%とした。統計解析はSPSS for Windowsを用いた。
【結果】移動距離の差の平均値は、支持基底面が広い状況を連続した試行Aでは1.23±0.96 cm、支持基底面が広い状況に次いで狭い状況にした試行Bでは2.06±1.48 cmであり、試行Aに比べ試行Bの移動距離の差は有意に大きかった(p<.05)。また、試行Aよりも試行Bの方が移動距離の差が大きかった被験者の割合は、全体の66%(32名中21名)であった。
【考察】本研究では、健常な若年者モデルにおいて支持基底面の減少が上肢のダイナミック・タッチの精度が低下することを認めた。このことから支持基底面の減少が上肢探索機能を低下することが示唆された。今後、臨床応用として例えば支持基底面の減少が起こりうる片麻痺者にも検討していきたい。
著者関連情報
© 2008 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top