抄録
【目的】
膝屈筋群エクササイズは一般的にレッグカールが用いられている。近年は、Mjolsnes
らが報告、推奨しているノルディックハムストリングスを取り入れた下肢障害予防プログラムが報告されている。しかしレッグカールと、ノルディックハムストリングスの膝屈筋群に対する効果の検証は十分とは言えない。そこで、下肢疾患の既往歴のない健常成人を対象に各トレーニングを行い、それぞれにおける介入前後の等尺性、求心性および遠心性膝屈曲トルクの変化の検証を行った。
【方法】
対象は、本研究に同意を得た下肢疾患の既往歴のない健常成人(男性9名、女性10名)とした。これらを、ノルディックハムストリングス群9名、レッグカール群10名に無作為に振り分け、介入前に膝屈曲における等尺性・求心性・遠心性トルクをBIODEXを用いて測定し、ピークトルク、総仕事量の算出結果を比較の対象とした。介入方法はトレーニング前にエアロバイク50W5分、ハムストリングスのストレッチを5分を行った後、ノルディックハムストリングス群は1週目から3週目は5回を2セット、4週目から6週目は5回を3セットとし、レッグカール群はトレーニング前に10RMを設定し、10回を3セット施行した。これをそれぞれ週に3回、6週間行い合計18回施行した。
統計学的処理は対応のあるt検定を用い各群の介入前後の値を比較した。有意水準は5%とした。
【結果】
介入前の屈曲トルクは、等尺性、求心性および遠心性において2群間に有意差は認められなかった。ノルディックハムストリングス群で、介入前後の群内比較では、等尺性、求心性ピークトルクでは有意な差は認められず、遠心性ピークトルクにおいては、介入後に膝屈曲ピークトルクが有意に高値を示した。レッグカール群では、等尺性、遠心性ピークトルクの両者において、介入後では膝屈曲ピークトルクが有意に高値を示したが、求心性ピークトルクにおいては有意な差は認められなかった。総仕事量の介入前後の群内比較では、レッグカール群の遠心性のみ有意に高値を示した。
【考察】
ピークトルクで検討した場合、レッグカール群ではトレーニングを行う上での膝関節の角度や、筋の収縮形態の特異性による効果により等尺性および遠心性の膝屈曲ピークトルクが有意に高値を示し、ノルディックハムストリングス群も同様に、トレーニングを行う上での膝関節の角度や、筋の収縮形態の特異性による効果によって遠心性の膝屈曲ピークトルクが有意に高値を示したと考えられる。総仕事量で検討した場合、トレーニングを行う上での膝関節の角度の違いによってレッグカール群の遠心性のみ有意に高値を示したと考えられる。