関東甲信越ブロック理学療法士学会
Online ISSN : 2187-123X
Print ISSN : 0916-9946
ISSN-L : 0916-9946
第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 26
会議情報

口述発表3(骨・関節系)
人工膝関節全置換術前後における短期的な膝関節位置覚の変化
*中安 健瀧原 純橋本 貴幸渡邊 敏文
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】  人工膝関節全置換術(以下、TKA)後の理学療法は入院期間の短縮により、短期間で問題点を把握し効果を出すことが求められる。関節位置覚は歩行やパフォーマンスに影響することが指摘され、TKA後の関節位置覚の先行研究では術直後に低下しその後回復することが報告されている。今回、術前後における関節位置覚の変化について調査し先行研究と一部異なる結果と、関節位置覚の測定角度による違いを示したので報告する。 【方法】  対象者は2008年10月から2009年11月までに当院にて手術を行った24名(33膝)で、年齢は74.2±7.5歳、性別は男性10名、女性14名であった。疾患名は変形性膝関節症が29膝、関節リウマチ4膝であった。対象者には研究の趣旨を口頭にて説明し同意を得た。関節位置覚の測定に使用機器はBIODEX SYSTEM3 を使用した。測定は閉眼で行った。開始肢位として対象者は背もたれ座位45度傾斜位とし、下肢は膝関節屈曲90度とした。検者は対象者の膝を他動的に伸展し目標角度で静止させ、再び開始肢位に膝を戻した。次に対象者が静止した膝角度を自動運動で再現しその角度をモニター画面から記録した。目標角度は30度と60度とし、それぞれの角度を3回、ランダムに測定した。測定時期は術前、術後2週、術後4週とした。測定値から目標角度を引いた値を関節位置覚値とした。3回の各目標角度の平均値を結果として利用した。統計解析は目標設定と測定時期による2要因の分散分析を行った。有意水準は5%未満とした。統計解析ソフトはSPSSversion15を使用した。 【結果】  目標角度30度の術前値は-6.8±5.7、術後2週値は-4.5±5.4、術後4週値は-4.0±6.4であった。目標角度60度の術前値は-16.4±10.2、術後2週値は-15.8±8.2、術後4週値は-13.5±8.1であった。統計解析の結果では、交互作用は認められず(p=0.758)、目標角度に主効果を認め(p=0.000)、測定時期に改善傾向は見られたが有意差を認めなかった(p=0.098)。 【考察】  測定時期による変化では術直後においても低下を認めず、先行研究との違いを認めた。先行研究との結果が異なる要因としては、測定方法の違いが影響したと思われる。一方、目標角度による関節位置覚の正当性では60度でより低下を認めた。屈曲角度が増すことによる筋粘弾性の変化などが影響したものと思われ、60度付近の動きが必要となる歩行練習などの理学療法を行う上で配慮が必要になることが示唆される。

著者関連情報
© 2010 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
前の記事 次の記事
feedback
Top