関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: P1-2-017
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ポスター発表2 「基礎1」
高濃度酸素吸入による身体ストレスへの影響
異なるストレスマーカーの関連について
*菊本 東陽伊藤 俊一丸岡 弘星 文彦
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抄録
【目的】
高濃度酸素吸入は、運動や長時間自動車運転時に生じる身体ストレスを軽減し、疲労回復や集中力を向上する効果のあることが指摘されている。しかし、運動強度や種々のストレスの指標(ストレスマーカー)との関連は十分に明らかにされていない。本研究の目的は、(1)高強度での運動負荷時における高濃度酸素吸入がストレスマーカーにおよぼす影響、(2)同条件下における唾液アミラーゼ活性と酸化ストレス度・抗酸化力の関連、について検討することである。

【方法】
対象は測定前に研究の詳細を口頭で説明し、書面にて同意を得た健常男性10名(平均年齢20.4±2.0歳)とした。方法は高濃度酸素吸入有無の2条件で運動負荷を行い、運動負荷前後の身体ストレスの変化を測定した。運動負荷には自転車エルゴメーターを使用し、運動強度を最大下(終了基準:80%Heart Rate Max、自覚的運動強度「非常にきつい」)とした。高濃度酸素吸入には、高濃度酸素発生装置(ICST社製)を使用し、高濃度酸素発生機能を有するもの(酸素吸入:28%O2,3L/min)と有さないもの(プラセボ吸入:21%O2,3L/min)を用意し、鼻から吸入させた。測定は二重盲検法により間に24時間以上の休息を挟み実施した。身体ストレスは、唾液アミラーゼ活性(AMY0)、酸化ストレス度(d-ROMテスト)・抗酸化能力(BAPテスト)を測定した。AMY0の測定には、唾液アミラーゼモニター(ニプロ社製)を、d-ROMテスト、BAP テストの測定には、活性酸素・フリーラジカル自動分析装置(H&D社製)を使用した。運動中は心拍数をモニターした。得られたデータは平均±標準偏差で示した。データ解析は、危険率5%未満を有意差ありとし、運動負荷前後の各ストレスマーカーの平均値の差、各ストレスマーカー間の相関を求め検討した。

【結果】
全員が最大下時まで運動を行えた。平均運動持続時間は酸素吸入時 551.8±72.4秒、プラセボ吸入時 565.4±70.0秒で両条件間に有意差を認めなかった。AMY0は、両条件ともに運動負荷後に有意な増加を認めた(p<0.01)。d-ROMテストは、酸素吸入下では運動負荷前後に有意差を認めなかったが、プラセボ吸入下では運動負荷後の有意な上昇を認めた(p<0.05)。BAPテストは、両条件ともに運動負荷前後に有意差を認めなかった。いずれのストレスマーカー間にも有意な相関を認めなかった。

【考察とまとめ】
今回の結果から、高強度運動負荷は身体ストレスを上昇させることが確認できた。また、酸素吸入時に酸化ストレス度が上昇しなかったのは、高濃度酸素に酸化ストレスを軽減する効果のあることが示唆された。また、各ストレスマーカー間に相関を認めなかった一因として、レスポンスの異なりが関与しているものと推察された。
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© 2011 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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