関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 124
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変形性股関節症の歩幅と日常生活動作の関連性について
齋藤 彰誉平尾 利行妹尾 賢和草木 雄二岡田 亨老沼 和弘
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抄録

【目的】
変形性股関節症(股OA)患者において、疼痛の増強とともに歩行能力の低下をきたすため、生活の質(QOL)は著しく低下している。その歩行能力を簡便に推定する方法として、平野らが考案した2ステップテストがある。2ステップテストは、バランスを崩さずに2歩幅長(開始肢位の両側つま先から最終肢位のつま先までの距離)を身長で除した値(2ステップ値)を算定する方法である。2ステップ値は1.0以上で歩行自立度が高いとされている。また、2ステップテストは6分間歩行テスト、Functional reach、高齢者転倒リスクとの相関があると報告されている。しかし、日常生活動作(以下ADL)との関連を調べた報告はない。そこで、2ステップテストとADLとの関連を検討することを目的として本研究を行った。
【方法】
対象は平成23年5月~24年2月まで、当院にて人工股関節全置換術目的で入院された他に既往のない進行期・末期の片側股OAのうちcrowe1型患者98名(女性80名、男性18名)とした。対象者に人権擁護がなされていることを説明し同意を得てから実施した。ADL評価はWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)機能障害を用いた。WOMAC機能障害は、17項目を5段階で点数化するものであり、最高が0点、最低が68点である。2ステップテストは2回計測し、最大値を使用し2ステップ値を求めた。統計学的分析ではSpearman相関係数を用いて2ステップ値とWOMAC機能障害との関連を調べた。有意水準は5%とした。
【結果】
2ステップ値とWOMAC機能障害合計点では有意な相関は認めなかった。WOMAC機能障害の個別項目において、2ステップ値は昇段動作(r=-0.233)、平地歩行(r=-0.216)、浴槽の出入り(r=-0.243)、重作業家事(r=-0.238)と負の相関を認めた。その他の項目においては有意な相関は認めなかった。
【考察】
2ステップ値とWOMAC機能障害合計点に関連を認めなかった理由として、機能障害の項目には靴下の着脱・ベッドからの起き上がり動作・座位保持等の歩行動作を伴わない動作が含まれているためではないかと考えた。しかし、昇段動作・平地歩行・浴槽出入り・重い荷物を片付けるなどの重作業家事という移動を伴う動作と関連が認められたことから、2ステップテストはADLでの移動能力を推定する指標の一つと成り得るのではないかと考える。
【まとめ】
2ステップテストとADLの関連についてWOMAC機能障害を用いて検討した。2ステップ値とWOMAC機能障害合計点において関連は認めなかったが、移動動作が含まれるADL動作との関連を認めた。2ステップテストはADLでの移動能力を推定する指標の一つと成り得るのではないかと考える。

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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