関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 133
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肩関節外旋運動時の棘下筋および肩甲骨周囲筋の筋活動-回旋筋腱板トレーニング再考のための基礎的研究-
宇賀 大祐遠藤 康裕粕山 達也坂本 雅昭
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抄録

【目的】
肩関節障害に対する回旋筋腱板トレーニングは低負荷で行うことが多い.また,肩甲骨周囲筋は肩甲骨安定化として作用し,回旋筋腱板に影響を及ぼす.しかし,肩関節内外旋運動において,異なる負荷量での回旋筋腱板と肩甲骨周囲筋の筋活動バランスについての報告は少ない.本研究は,表面筋電図を用いて,負荷量を変化させた時の筋活動バランスを把握し,回旋筋腱板トレーニングを再考することを目的とした.
【方法】
対象は,健常成人男性6名(年齢23.3±1.0歳,身長172.7±2.6cm,体重66.2±4.5kg)であった.測定課題は,立位での肩関節等尺性外旋運動とし,上肢下垂位,肩関節内外旋中間位,肘関節90度屈曲位,前腕回内外中間位とした.Hand Held Dynamometer(HHD,アニマ社製,μ-Tas MF-01)を用いて,5秒間の最大等尺性外旋筋力測定後,HHDのモニターを確認しながら,無作為に最大外旋筋力の20%,40%,60%,80%の負荷量で同様に測定を行った,各運動時の棘下筋,僧帽筋上・中・下部線維,前鋸筋,三角筋後部線維の筋活動を表面筋電計を用いて測定した.測定中間3秒間の筋電図波形から実効値(Root Mean Square;RMS)を求め,各筋の最大随意収縮(MVC)時の筋活動量を100%として正規化(%MVC)し,各筋の%MVC,棘下筋の%MVCとの比(%MVC比)を負荷量間で比較した.統計学的分析は,SPSS ver. 17.0 for Windowsを使用し,%MVCの比較はWilcoxonの符号付き順位検定,%MVC比の比較はFriedmanの検定を用いた.有意水準は5%とした.本研究は,対象者に目的および内容, 対象者の有する権利について口頭にて十分な説明を行い, 参加の同意を得た上で実施した.
【結果】
 %MVCの比較は,全ての筋で80%までは有意に筋活動が増加し,80%~100%では棘下筋のみに有意な増加が認められた.全ての筋で%MVC比に有意差は認められなかった.
【考察・まとめ】
 %MVC比に有意差がないことから,負荷量に関わらず,回旋筋腱板である棘下筋と,肩甲骨周囲筋の筋活動比は一定であることが分かる.Kiblerは,回旋筋腱板の付着部位としての土台として肩甲骨の重要性を述べている.今回の結果からも,負荷量増大に伴い棘下筋の筋活動が増大し,肩甲骨を固定するために,僧帽筋や前鋸筋の筋活動も増大することで筋活動比が一定になると考えられる.したがって,肩甲骨を制御した状態での棘下筋の筋力増強といった,回旋筋腱板局所ではなく肩甲帯を含めた総合的なトレーニングを行うには高負荷の方がより効果的である可能性がある.しかし,本研究は健常者を対象としており,肩関節障害者では筋バランスが崩壊する可能性がある.今後は,障害者を含めた検討が必要である.

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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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