関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 160
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不髄意運動の多い長期臥床患者におけるエネルギー消費量の予測値と実測値の比較 -栄養管理から理学療法アプローチを考えた症例について -
小川 順也寄本 恵輔立石 貴之丸山 昭彦前野 崇三橋 佳奈小林 庸子平崎 重雄
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抄録
【目的】
本研究の目的は,不随意運動の多い長期臥床患者のエネルギー消費量について、栄養管理という視点から理学療法アプローチを考えることにある.
【対象】
60歳代男性(身長170cm,体重41kg,BMI:14.2)、発症12年が経過したハンチントン舞踏病患者である。ShoulsonとFahn分類:stageⅤ,modified rankin scale:5であり、胃瘻による栄養管理で在宅療養を行っていた。経過として,誤讌性肺炎からARDSを併発,また、イレウスを合併した。人工呼吸療法、薬物加療にてARDSは緩解、胃空腸吻合術施行によりイレウスは解除され、胃瘻及び IVHポートによる栄養管理となった.長期臥床となった一方で不髄意運動が強く、低栄養が続き、仙骨部に褥瘡を認めた。 本研究にあたり,包括的同意書及び口頭にて家族の了解を得て実施した.
【方法】
まず、Harris-Benedict(以下HB)による基礎代謝(BEE)の予測値を算出、次に呼気ガス代謝モニターはメータマックス3B(ドイツコールテックス社)(以下MM3B)とMETA VINE(VINE社)(以下MV)を使用し実測値を測定する。HB、MM3B、MVを比較するため検討項目として、エネルギー消費量(EE),呼吸商(RER),METS,呼吸数(RR)とした.また、経過的な検討項目を後方視的調査として、診療録より本症例の実際の摂取カロリー、血液検査(TP,ALB,Hb,CRP)、理学療法プログラムの経過について調査した.
【結果】
HBによるBEEは1054.5kcalであり,MM3B,MVはそれぞれ,2435kcal,2400kcalであった.MM3Bのその他の項目結果として,RER:1.4,METS:2.3,RR:25.4であった.また,MM3B測定中の不随意運動が著明であった時間帯(10分)のEEは平均2794kcalである.臥床当初の摂取カロリーは1120kcalで,血液検査はTP:5.1,ALB:2.7,Hb:8.5,CRP:14.58であった.呼気ガス分析の結果より医師にカロリー不足の状況を伝えた結果,退院時の摂取カロリーは1710kcalとなった.また,血液検査はTP:6.8,ALB:3.1,Hb:11.8,CRP:0.17である.理学療法プログラムは,1日3時間の車椅子座位,端座位,立位保持訓練,歩行器歩行など在宅に向けたプログラムである.最終的に,自宅療養時と同様に歩行器歩行可能となり自宅退院となった.
【考察】
通常寝たきりであればエネルギー消費量は低下していると考えられるが,本症例は呼気ガス分析によりEEが予測値を上回っていた.呼気ガス分析も含めた身体•栄養状態の評価のもと,理学療法プログラムを進めたことが自宅退院し歩行器歩行を可能にしたと考える.
【まとめ】
今回の症例を通じて,栄養科だけでなく,医師,リハビリテーションスタッフ,看護部などチーム全体による栄養管理の重要性を実感した.
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© 2012 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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