抄録
【目的】
染色体異常症の中でダウン症候群は一番多く1,000人に1人の頻度で、群馬県内における年間出生は20前後と推定される。当院ではダウン症候群児に対して理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による個別リハビリテーションとダウン症候群児の家族に対して多職種によるグループ診療を行っている。当院におけるダウン症候群児に対する発達支援の取り組みについて報告する。
【方法】
平成19年4月から平成23年9月までに理学療法の依頼があったダウン症候群児を対象に、カルテから情報収集し当院でのダウン症候群児に対する個別リハビリテーションについてまとめた。また、平成21年度より2歳以下のダウン症候群児の家族を対象に、障害の理解と受容をサポートする目的でグループ診療を開始した。平成21年度から23年度までのグループ診療の活動実績を集計した。対象者家族には個人情報を提示しないことを説明し同意を得た。
【結果】
理学療法の依頼があった86名のダウン症候群児に対して個別で運動発達アプローチを行った。86名中、64名(74%)に先天性心疾患があった。また、理学療法開始月齢は5~6ヶ月が多く、開始時の運動発達レベルは未定頚と、早期の段階から理学療法士が介入した。運動獲得月齢は平均で、心疾患が無い群は定頚6.6ヶ月、座位13.2ヶ月、四つ這い移動16.1ヶ月、独歩25.1ヶ月で、心疾患が有る群は定頚7.8ヶ月、座位14.7ヶ月、四つ這い移動20.4ヶ月、独歩27.8ヶ月で、統計学的には有意差は認めなかった。さらに、全体でいざり移動を経て独歩を獲得した例は無かった。
グループ診療は遺伝科医師、理学療法士、言語聴覚士、小児歯科医師、栄養士による講義と家族のフリートークを主体とし年間2コース(初回コース年間3回、卒業コース年間1回)開催した。参加家族は、平成21年度は延べ31組、平成22年度は延べ60組、平成23年度は延べ70組と増加傾向であった。参加家族からは継続開催の要望が強かった。
【考察】
先天性心疾患が有ると運動発達が遅れる傾向にあった。独歩を獲得した症例全ての発達過程で、ダウン症候群児に特徴的ないざり移動を経ずに、四つ這い移動を経ていた。これは、介入初期からしゃがみ位、四つ這い、横座り、起き上がりなどの動作と運動を取り入れた効果が一因と考えられる。グループ診療では、早期に発達に関する知識を家族に提供し、障害に対する正しい理解と受容を促し、積極的な治療、療育への参加につなげている。
【まとめ】
ダウン症候群児に対する発達支援は、個別リハビリテーションとグループ診療それぞれの利点を生かした発達支援が重要である。